第2章 無人島か戦国時代か
京都へお一人様失恋傷心旅行中に、何の因果か戦国時代に、しかもあの有名な”本能寺の変”の夜にタイムスリップし、そしてその本能寺で偶然にも織田信長を助け出してしまった私は、あれよあれよと言う間に安土城に連れて来られ、着物に着替えさせられ、現在大広間に集まった武将達によって品定め?をされている最中………。
気分は転校生?いいや、そんな歓迎ムードは全然感じない。ライオンの檻の中に放り込まれたウサギ。その例えが妥当な気がする。
「伽耶、皆に自己紹介をしろ」
いわゆる上座?に座った信長様は命令口調で私に言う。
命令されるのは好きじゃない。と言うか、親にも会社の上司にも先輩にもされた事がない。こんなの、私のいた時代では完全にアウトだ。
…けど相手はあの織田信長で、彼の放つ威圧感の前では逆らえそうもない。それに、彼のあの冷たく誰も信じない様な目は、大好きだった大地の事を少しだけ思い出させる。
「伽耶です」
大地もいつも寂しそうで掴み所のない目をしていた。
「俺は羽柴秀吉だ。お前は信長様を炎の中から助け出したと聞いたが、見たところ下働きの女中じゃなさそうだしあの夜本能寺で何をしていた?」
(広間に入った時から、一番私を睨んでいた人は羽柴秀吉だったんだ?
羽柴秀吉って、確か信長様からはサルとかって呼ばれてて、人たらしの女好きって言うイメージだったけど見た目からは想像できないな。全然サル顔じゃないしむしろかなりなイケメン)
「私にも分かりません。気づいたらあそこにいて火事で、信長様が倒れてて、それで…」
(刀を振り上げて信長様を殺そうとしてた人物がいたってことは、言わない方がいいのかな…?)
「はぁ〜、嘘つくならもっとマシな嘘つけば?」
どこまで話せばいいのかを考えていると、猫っ毛の、これまた綺麗な顔をした男の人が声を上げた。
「嘘なんかついてませんっ!本当に気づいたらあそこにいて、どうしてなのかは私が聞きたいのに…」
(第一、ここに来たのだって私の意志じゃないのに…)
「三成さんっ!ここに来たら、私を希望の場所に送ってくれるって約束してくれましたよね?」
(そうよ、とりあえずここに来たらってあなた天使のような微笑みで言ってたじゃないっ!)
私の言葉で他の武将たちも皆三成さんに視線を向けた。