第9章 視察
「悪いな。一つ譲ってやりたいんだが、信長様の判断を仰がないと…」
「うう、そうですよね」
もう口は油物を欲しているのに…
「ああ、チキンもポテトも食べたかったなぁ」
去っていく秀吉さんの背中に思いを吐露する。
「やっぱり諦めきれない。待って〜秀吉さん、光秀さんっ」
「ポテト、チキン、二人とも待って〜」
二人を説得して買い取ろうと走り出した時…
「……ぽてと、ちきんとは何だ?」
声が空から聞こえて来た。
(…………ん?)
「らーめんと言う言葉も言っておったな」
(あ、これもしかして…夢?)
その声で意識が移動して我に返り目を覚ました。
「……やっぱり夢かぁ〜。そうだよね、あんなことあるはずないし…」
残念な気持ちと同時に、被災地の帰り道、信長様の馬の上で寝たフリのつもりが爆睡してしまったことを思い出した。
「信長様、寝させて頂きありがとうございます。もうお城に到着しますよね?」
(かなり寝たような…随分と体がスッキリしてるけど…)
「…もう城に着いておる」
何がそんなにもおかしいのか、信長様は目を細めククッと声を殺して笑っている。
「あ、そうなんですね。もう城に……」
(…え?城に着いてる!?)
何か状況が変だと気づく。
「……っ、」
(ここはどこ?そう言えば、なぜ信長様と向かい合わせ?)
馬に乗っているのなら背中と胸がくっついているのに、なぜか全身前部分がくっついていることに気がついた。
(これは…)
そーっと、視線をずらして確認すれば、
(うっ、腕枕っ!?)
「城に着いたどころかもう朝だ。良く眠れたようだな。おはよう伽耶」
パニック状態の私に構わず、オレ様イケメンは朝から爽やかな挨拶と笑顔を見せた。
(朝っ!?)
「もっ、もしかして私たち一緒に…?」
(寝た……っ!?)
もう問いかける必要はないほどに、現状はそうだと言っている。