第9章 視察
「どうした?早く食べよ。毒などは入っておらん」
「わ、分かってます」
そんなことを疑ってたんじゃない。ただ、
(これって…間接キス!?)
小中学生か?って反応かもしれないけど、信長様が食べたおにぎりに口をつけることに妙に意識をしてしまって一口を食べることができない。
「早くせんと、取られても知らんぞ」
信長様が口を開けまたおにぎりをかじりろうとするから、
「だ、ダメっ!私が食べますっ!」
慌てておにぎりを信長様から遠ざけて自分の口に運んだ。
(…っ、食べちゃった…)
じわじわと顔も体も熱くなっていく。
「ふっ、興奮するほど握り飯が嬉しかったのか?」
「…はい。自分で作っておいてなんですけど、美味しいです。ありがとうございます」
急な体温上昇をおにぎりのせいだと思ってくれて良かったと、ホッと胸を撫で下ろした。
「もう取ったりせん。ゆっくり食え」
「はい」
一つのおにぎりにこんなにドキドキしたのは初めての中、頂いたおにぎりをゆっくりと完食した。
そして情けないことに、お腹が満足をすれば次に来るのが眠気で…
(う、昨日は一睡もできなかったから眠い)
昨夜の膝枕事件の寝不足と、いつも以上に緊張と体力を消耗した私は、馬のなんとも言えない揺れも相まって、勝てそうにない眠気が襲って来ていた。
(ダメダメ、こんな状況で寝るなんてあり得ない)
それでも寝てはいけないと思い睡魔と戦っていると、フワッと信長様の片腕が私を包み、胸に抱き寄せた。
「っ、信長様っ?」
「眠いなら寝て構わん」
急な胸の感触に眠気は一瞬吹き飛び、信長様の胸から体を離した。
「大丈夫です。そんな、信長様だってお疲れなのに」
(それにこんなの緊張して眠れるわけない)
「遠慮はいらん、もたれよ」
信長様は再び私を胸に寄せる。
「……っ」
頬に感じる信長様の胸は硬いのに何故か心地良い。
「…そういえば、なんで今朝私は外出禁止だと言ったんですか?」
ふと今朝の会話が思い出され、私は疑問に思ったことを聞いてみた。