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虚飾の宴【R18】

第3章 梅の巻




―――――――乙はきっぱりと応えた。

「いい知らせじゃないってことは私たちは分かってる。あいまいにすることのほうが残酷だと私は思うの。

それにあの子は強い子よ。」



「…………そう。分かった。」

「じゃ、呼ぶわね。」

乙が手を叩くと、支度部屋から春鶯が出てきて跪いた。


「王様、妃様、わざわざのお越し恐れ入ります。」


最敬の礼をした。


これはまた驚いたね、客人は高貴な人達とは思ってたけど王族だったとはね!


「手紙に書いた春鶯よ。」

「貴方が春鶯ね。沙良……乙さんの友達のネズよ。顔を上げて。こちらはナン、一応第三王。」

「一応って何だよ!よろしくな、春鶯。」


「……よ、よろしくお願いしますっ!王様!妃様っ!」

「あはは、春鶯、二人はこんな感じだからそんなに畏まらなくて大丈夫だよ。」

「は、はいっ………」

春鶯はゆっくりと顔を上げた。



「……………優しい目がとても梅花に似てるわね。じゃあ春鶯、まずこれを…………」

ネズ……いや妃は懐の奥に大切に仕舞っていたものを取り出した。


春鶯の華奢な手の平の上に載せられたものは紙に包まれていた。


「………開けなさい。」

妃に促され、白い指が包みを開く。


「……………!」

出てきたのはウグイスの刺繍を施した絹の手巾。赤黒いシミのついたそれを春鶯は黙って胸に押し抱いた。








「……すまない、春鶯。」

長い沈黙を破ったのは若き王だった。

「梅花――――君の姉さんと生まれたばかりの子が王都を出されてすぐに従者を追わせた。


だけど、もう少しのところで――――」


春鶯は泣くでも喚くでもなく、手巾を握りしめたまま動かなかった。



「梅花は赤ちゃんとその手巾を抱き締めて離さなかったそうよ―――――」

妃が云う。

「もう少しほとぼりが冷めたら手巾は故郷の生家に届けることになっていたのだけど――――」




―――――春鶯は胸元からもう一枚の手巾を取り出した。
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