第3章 梅の巻
「これを、根元に入れてもらえますか?」
春鶯が取り出したのはあの梅と鶯の手巾……‥
「!………これは貴方が持っていなさいよ!」
「いえ…………せっかく乙様が姉さんの弔いにって梅の木を選んでくださったのですから。
それにここに入れておけば失くすこともないし、いつでも姉さんに会えます!」
「………分かった。おいで。」
乙は春鶯の腕を引いて庭へ降りた。
「さあ。」
乙に促されて春鶯は一対の手巾を人夫が掘った穴の中へ入れた。
その上に若々しい苗木が植えられた。
呼んでいた楽士たちが賑やかな音楽を奏で始めて、宴の始まりだよ!
「ネズもナンも今日はゆっくり楽しんでってね。」
「ありがとう!沙良!」
「……ネズは俺の側を離れんな!」
「あら、どうして?せっかくだから私もお姐さんたちと遊びたい!」
年若い娼妓たちがさっきから手招きしているね。
「だーめーだ―――!」
「だからどうしてよ?!」
「どうしてもだっ!」
乙は二人のやり取りにまたケラケラと笑っている。
「本当に貴女たちって面白いわね。飽きないわ!」
さてさて、ようやく私にも妹分が出来たね。
長く生きてみるもんだ。
そしてこれからももっと私『佳松』を退屈させてくれないんだろうね、
乙比女――――――――沙良は。
―終―