第2章 竹の巻
「何だ……朝早くから皆揃って……」
第一妃様の部屋に引き入れられた王。
部屋には第一妃様を真ん中にして三人の妃様方が椅子に腰掛けていた。
「お早いお帰りですこと。旦那様。」
しばしの沈黙の後、最初に口を開いたのははちきれんばかりの大きなお腹を抱えた第三妃様だ。
この様子だともうじき皇子様か皇女様がお生まれになる様だね。
「………怒っているのか?皆に断っただろう。
鼠姫が沙良を心配していたから様子を見に廓に行くと……
元気に暮らしていたぞ。」
「様子を見に行っただけで朝帰りですか。」
廓から上がったという第二妃様が訊く。
「だから積もる話があってだな!」
「へーえ、一晩中昔話ですか?」
「あ、ああ……そ、そうだな…………」
また皆黙りこんじゃったね。
王は落ち着かなく先程から流れてくる冷や汗を手の甲で拭った。
「もう行くぞ………一眠りしたい。」
「だいぶお疲れのご様子で?」
「ああ………まあ……な……」
「何故目を逸らす!!」
ビクつく王。
情けないねえ〜。一国を治める人物が。
「旦那様。」
ずっと黙って様子を見ていた第一妃様が良く通る透きとおった声で尋ねた。
「で?いたしたの?」
驚いたね!第一妃様といえば最上級の大臣の令嬢で美貌だけでなく教養も品格も後宮一と謳われるお方だよ?
そのお方のお口からこんな言葉が出るとはねえ。
「どうなの?旦那様。」
「………しま……し…」
「声が小さい!!」
叫んだのは第三妃様。
「いたしましたっ!やりましたっ!」
「はい、言った―――」
「まあ、そうだわよね?元婢女とはいえ今や評判の売れっ妓と一晩中同じ部屋で。」
「何もないワケないわよねえ!」
くすくす……妃様方は言いたい放題だね。
「しかしながら三人も妃がいて、そのうち一人は身重だという一国の王が!」
「す、すいませんでした!!」
やれやれついに王は膝をついてしまったよ。