【金カ夢】夢の中で……。【Golden Kamuy】
第2章 アシㇼパと
「…で、捜し物は見つかったのか?」
数日ほどこのコタンでお世話になると、街に帰る日になった。
チセでフチとアシㇼパの作ったご飯を頂きながら(勿論、宿泊させていただいている間には、ユメコは自分がお手伝いできる範囲でコタンの仕事を手伝った。)、アシㇼパが声をかけてきた。
『…ううん、残念ながら何も無かったよ。』
アシㇼパには初めて会った日に、探し物をする為に雪山に入ったことを既に伝えていたし、1人では探せなくてもみんなで探すと見つかるかもしれない!と、アシㇼパが口添えをしてくれて
コタンのみんなも、狩りに行くたびに見かけたら教えると、手伝ってくれた。
ユメコが自分でも何があるか分からないので、一体この雪山で何を探せばいいのか分からないのに──である。
「そうか…。見つかるといいな。ユメコの記憶も、なくしたかもしれないものも。」
ユメコは、初めてあったその日のうちに、アシㇼパに自分のことを全て話してしまっていた。
今に思えば、初対面の性別も分からないようなやつから、意味がわからないことを聞かされる少女も大変だったと思う。
しかしながら、彼女、アシㇼパはそんな初対面の人間に対して、バカにすることも無く、話を聞き、真摯的に向き合ってくれた。
雪山で倒れていたのを発見されたことや、一部記憶がないこと。
そのせいで自分が本当にこの時代に生きている人間なのか分からなくなる、と。
お世話になっている女将にも言えないような些細な悩み等もアシㇼパのこの瞳を見ると、不思議なことに何故だか全てを話してしまったのだ。
ユメコ自身もわからないままに。
『ありがとう。アシㇼパやフチ、コタンの皆が助けてくれてるから、それだけですごく嬉しいよ。』
フチとアシㇼパに笑顔でお礼を伝えると、アシㇼパは「当たり前だろう!ユメコはもう、家族のようなものだ!」と若干はにかみながら返してくれた。
『ふふふっ、また遊びに来るからね!今度街にきたら私の働くところにも遊びに来てよ!』
「あぁ。今夜は狩りに出かける予定だが、早めに遊びに行く事にしよう。」
そんな口約束をしながら、食事の片付けをし、ある程度終えていた荷造りをきちんと終わらせると、村人であるアイヌたちにまた来るからと挨拶をし、ユメコはコタンを後にした。