【金カ夢】夢の中で……。【Golden Kamuy】
第10章 キロランケニシパ
キ「脱獄王? なんだ?それは」
「『「…」』」
キロランケの言葉にどこまで信用し、話ていいものなのかと迷い、ユメコ達は目を合わせる。
杉「……白石は網走監獄を脱獄してきた入れ墨の囚人だ」
キ「!?こいつがあの?」
『え、白石も有名なの?!』
どうやらキロランケのセリフからして、「脱獄王」という異名は有名らしい。
キロランケの信用を得るために、白石は服を脱ぎ、キロランケにのっぺらぼうが入れたという囚人の入れ墨を見せることになった。
キ「なるほど……剥がせというわけか……」
白「!!」
白石の身体を触りながら、マジマジとのっぺらぼうが入れた入れ墨を観察するキロランケは、直ぐに囚人の入れ墨が皮を剥がすことを前提に彫られたものだというのを理解したようだ。
杉「やはりすぐにわかるのか」
キ「こんな真似ができるのはあの人しかいない……他にもあるのか?」
杉「無い」
他にもあるのかと尋ねられると、すぐさま杉元が、持っていないと答える。
ユメコ、アシリパ、白石は間髪入れずに答えた杉元のその言葉に、杉元がキロランケを信用していないのだと理解した。
杉「あんたはアシリパさんの父親と日本へ来たって言っていたな。あんたしか知らないのっぺらぼうの情報があるんだろ?」
情報は対等じゃないといけないとばかりに杉元が投げかけた質問には答えず、やれやれといった感じでキロランケは立ち上がり、チプと呼ばれる丸木舟に乗った。
「川を少し下ると村がある。今日は俺の家に泊まっていけ」
キロランケのその言葉に、4人はチプに乗り込んだ。
キロランケが先頭に立ち、その後に白石、アシㇼパ、ユメコ、杉元の順番で座っている。
キロランケが慣れた手つきでチプを操作しながら川を降り、4人に語るように話し始めた。
キ「ロシアの極東、アムール川流域にはたくさんの少数民族がアイヌとさほど変わらない生活をしている。俺たちは若いころ、そこから海を渡ってやって来た。お互い小樽で家族を持つと自然と疎遠になった」
キ「のっぺらぼうがアイヌの軍資金を独り占めしたかったとは思えない。こんな仕掛けまでして、莫大な金塊を娘達 に託そうとする執念……。何か目的があったんじゃないのか?」