【金カ夢】夢の中で……。【Golden Kamuy】
第10章 キロランケニシパ
のっぺらぼうの正体を知っているキロランケならば、のっぺらぼうの目的を知っているのではないかと杉元はキロランケに訊ねる。
キ「わからない…。会わない間に彼に何が起きたのか。俺がアシㇼパと彼の葬式で会ったのも、アシㇼパが赤ん坊の時以来だ。」
白「刺青を見てピンとくるものはないのか?アシㇼパちゃんにしかこの暗号は解けないってことなんだよな?」
長らく会っていないと答えるキロランケに分からなければ、やはりアシㇼパだけがこの答えを解く鍵を握っているかもしれないと思った白石が、後ろに座るアシㇼパへ問いかけるが首を横に振るだけだった。
杉「もしそうだとしても、全部集めないと解けないはずだ」
『はぁ…まるでパズルだよ。囚人と言ってもこの間の辺見さんのように強いひとが沢山いるってことでしょ?頭だけ良くても力が無くちゃ入れ墨を集めることさえ出来し、逆も然り…』
ア「囚人を探すより……。何よりもまず、のっぺらぼうに会って確かめたい。もし本当にのっぺらぼうが私の父親なら、娘の私にだけはすべてを話してくれるはずだ」
キ「北海道のどこかにいる凶悪な脱獄囚を全員探して捕まえるよりは楽かもな。少なくとものっぺらぼうの居場所ははっきりしてる」
そんな会話に、白石が割って入る。
白「甘いぜ甘いぜ。俺は日本中の監獄や集治監を脱獄してきたが、網走監獄はなかでもとびきり厳重だ。のっぺらぼうは足の腱を切られて満足に歩けなくされてる上に、金塊を狙う看守から常に監視され…。そして外では第七師団がつけ狙っているはずだ。本人に会うなんて、まず不可能だろうぜ。」
ア「……」
『そんな…』
脱獄王の異名を持つ白石のセリフから見ても、網走監獄が厳重で、尚且つのっぺらぼうを狙うものたちが沢山いると聞けば、のっぺらぼうに会うことが不可能だと改めて思い知らされてしまい、アシㇼパとユメコは息を呑んだ。
白「俺の協力無しではなッ」
ア「脱糞……いや、脱獄王」
『白石ぃいッ』
そんな危険な網走監獄だが、俺がいれば不可能ではないと、キリッとした表情の白石に、アシㇼパは顔色を明るくし、ユメコは初めて白石が頼もしい存在だと思えたのだった。