【金カ夢】夢の中で……。【Golden Kamuy】
第10章 キロランケニシパ
ア「目玉は茹でダコの味がして美味いぞ。みんな魚が獲れたら一番にホジくってしゃぶる。子供のおやつとして奪い合うくらい大人気なんだ」
巨大魚イトウの目玉だ。この中で1番年齢の低いアシㇼパの顔の大きさほどありそうだ。アシㇼパは両手で目玉を持ち、食べていいぞと勧めてくるが、さすがにユメコは食べる勇気がない。
『それならアシㇼパが食べればいいよ』
ア「ユメコは要らないのか?しゃぶっていいぞ、杉元」
ユメコがやんわりと断りを入れると、アシリパは杉元へとイトウの目玉を渡す。
杉元が持ってもかなり大きなイトウの目玉。
杉元は受け取ったイトウの目玉にかぶりつこうとするが大きくてなかなか食べられないし、どう食べたらいいのかも分からないようだ。
杉「おっきい」
キ「杉元……不死身の杉元か?」
キロランケが杉元の名前を聞いて「不死身の杉元」と口にした。なぜその名前を、との4人に緊張が走る。
杉「……なぜそれを?」
キ「俺は第七師団だ」
キロランケは煙草を吸いながら第七師団だと答える。
第七師団と聞くと杉元の雰囲気が一変した。
そっとキロランケから見えない左手で腰に装備していた武器を掴んだ杉元をみて白石は思わず固唾を呑む。
杉「鶴見中尉の手下か?」
ア「待て杉元ッ!」
アシリパが杉元を止め為に声をかける。
ユメコはどうしたらいいのか分からず、白石と共に動けずにいた。
キ「鶴見中尉? 俺がいた小隊の中尉は別の人間だ。それに俺は既に除隊して村で生活しているから誰とも関わりはない」
杉「たしかに鶴見中尉の手下は100名ほどと言っていた。第七師団といっても鶴見中尉の隊とは限らんか」
納得して腰の武器から手を離す杉元にアシリパたち3人はほっとした。
日露戦争時の師団の編成は、100名弱の小隊を率いるのが中尉。
その小隊が4個で中隊となり中隊長は大尉。
中隊が3個で大隊、大隊が3個で聯隊。
日露戦争時、第七師団には4個の歩兵聯隊があり、そのほか騎兵聯隊や砲兵聯隊など約二万人の兵で編成されていた。