【金カ夢】夢の中で……。【Golden Kamuy】
第10章 キロランケニシパ
慣れてない作業に疲れた杉元と白石は地面に寝っ転がりながらうつ伏せになると、
白「ねえ見て杉元、福寿草の花が咲いてるヨ?」
杉「ヤダ、かわいい」
頬杖をつき福寿草をキラキラと見つめながら、きゃっきゃっうふふとはしゃいでいる。まるで幼い乙女達のようだ。
そんな男二人の会話に樹皮を纏め終わったユメコとアシㇼパも入る。
ア「春が来たんだな。チライ・アパッポ。私達は「イトウの花」と呼んでいる」
杉「イトウって淡水魚の?」
『イトウは春になると現れる。この花が咲くのはイトウが川を上ってくる合図なんだってさ!前にアシㇼパに教えてもらったよ』
白「イトウも結構うまいらしいな。マグロに似てるって話を聞いたぜ。何とかとれないかな?」
ア「カジカを獲った罠のラウォマプでもイトウは獲れるぞ。作るか? でもどんなに大きな罠でもイワン・オンネチェプ・カムイは捕まえられないんだろうなあ、あな恐ろしや……」
杉「なんだい? それは」
『…ねえ、それフラグ?』
ア「ふら…?イトウは大きくなると七尺(約二メートル)を超えるものもいる。なんでも食べる悪食で川に落ちた子供を飲み込んだ話もある。むかし猟師の追っていたヒグマが然別湖を泳いで逃げた。しばらくすると、ヒグマが水面から消えたので見に行くと…。巨大なイトウがいて、その口からヒグマの前足がのぞいていた。そのイトウの大きさたるや、25間(約45メートル)はあったという。イワン・オンネチェプ・カムイはイトウの主だ」
『ねぇ、嘘だよね、嘘だと言って。これがフラグだなんて違うよね』
急に怯えたように話し出すユメコに不思議な顔をしつつ歩いていれば、前方に何やら作業中の男がいた。男は下を向き、網を使いながら魚を捕っているようなので、俯いている男の顔はこちらからは見えない。
杉「!?」
白「誰かいるぞ。あの男が捕ってるのがイトウじゃないか?交渉して一匹分けてもらおうぜ」
ア「あっ、キロランケニシパ!!」