【金カ夢】夢の中で……。【Golden Kamuy】
第10章 キロランケニシパ
ユメコは杉元が人魚をバケモノとアシㇼパに教え込むのを阻止するために、周りを見渡すと程よい太さと大きさの木の枝を拾い、カリカリと音を立てながら雪で埋もれた地面に人魚姫のイラストを描いていく。『(オタク舐めんなよ!)』と変な対抗心を燃やしながら、である。
杉「うわぁ、ユメコさんって絵を描くのが得意なんだね。上手〜」
白「おっ、すげぇ!人魚ってこんな感じなのか?こんな美人なら会って見てぇ!」
ア「おっぱいになんで貝殻がつくんだ?」
『まぁ、こんな美女とかじゃなくとも、男の奴がいたり、逆に老若男女問わずいるかもしれないけどね。空想のものだと言われてるけど、私が居た時代には『人魚姫』ってお話もあるぐらいだし。貝殻は…あれかな、大事な部分を隠すためじゃないかな?ほら、洋服の代わりに』
白「ははぁ、さてはユメコちゃんムッツリだな!何度誘っても一緒に出かけてくれねぇから女に興味が無いと思ってたら、こういうことか…。人魚の肉を食べると永遠の命と若さが手に入ると言われてるんだ。八百比丘尼っていう伝説があってな、人魚の肉を食べた娘が不老不死になるのだが…。永く生きると愛する者の最後を見送るばかり。娘は何百年も生き、尼となって最後には世を儚み岩窟に消えた」
『む、ムッツリって言うな!人魚の肉は食べると不老不死になると私の時代でも聞いたことあるけど…。美味しいとかの問題以前に、同じ上半身人間の人魚を食べるってグロくない??』
杉「確かに、それはちょっと…。しかし、死ぬべき時に死ねない辛さか……」
白「不老不死も良いことばかりじゃあないのね」
ユメコ、杉元、白石がしみじみと話し込んでいると、アシリパが足を止め、ひとつの木下で話始める。
オヒョウの木と呼ばれる木らしい。
オヒョウの樹皮はアイヌの着物や紐や袋に加工される。
アシㇼパにこの木の使い道、樹皮の剥がし方を丁寧に教わりつつ、四人は一人分の着物が作れるくらいの樹皮を剥がした。と、言ってもほとんどの作業は手馴れているアシㇼパがやったのだけれども。
ア「よし!もう十分だ。これで大体一人分の着物になる」
白「オヒョウの皮を剥ぐだけでも重労働だな」