【金カ夢】夢の中で……。【Golden Kamuy】
第2章 アシㇼパと
日中の仕事を終え、数日分の食料、お土産をいれた荷物。防寒をしっかりと施した服装をし、ユメコは雪山へと来ていた。
キラキラと輝く銀世界は、元々九州に住んでいたユメコには見慣れない景色だ。
息をする度にキンキンに冷えた空気が、鼻腔や肺をチクチクと刺激する。
寒さで顔や手足が悴んでくる。
壮大なこの景色を生身で感じながら、生きていた現代とはほぼ遠うものでは無いのかと思いながら、慣れない雪道を一人で歩いていた。
サクサクと歩く度に雪が沈む。
小さな雪の結晶が、風が吹く度に木々の間からヒュウヒュウと寒そうな音を醸し出す。
上を見上げる度にふわふわとした雪がユメコの顔に降ってきた。
現代人のユメコは、歩きなれない雪山を、明治時代の人に比べると少ない体力で少しづつ歩いていき、目的地である自分が倒れていたと言われた場所に向かっていた。
最初のうちは、女将さんに紹介され、自分を見つけてくれたという猟師さんに連れてきてもらっていたのだが、手がかりもなく。
その後も猟師を混じえたり、自分一人でここまで来れるようになった。
──何度もここまで歩いてきているが、自分の身元を証明できそうなものは何一つなかったのだ。
もちろん、時空の歪のようなものもなかった。
しかしながら、悲しいことばかりではなく、雪山ではいい出会いもあった。
『こんにちは。アシㇼパちゃんは居ますか?』
アイヌだ。
ある日ユメコは一人で過ごしていると、アイヌの少女と出会ったのだ。
彼女はかなり若いのに、しっかりと自分の意見を言えるような少女だった。黒色の髪の毛に、青く緑がかった綺麗な瞳の少女。煌めく瞳は、彼女の真っ直ぐな性格を表している様だ。
現代ではハーフ(混血)はそれほど珍しいものでもないはずだが、明治時代にここまで綺麗な瞳の人を見かけたことなど、ついぞ無かった。
彼女には初めて会った時から不思議と惹かれ、会う度にアイヌの未知の文化や狩り、食材や自然など知らないことについて教えてもらうことが多くなった。
今では山に登る度に彼女の村に遊びに行くというのが当たり前のようになっていたし、彼女の住むアイヌの村の人達とも仲良くなれたと思う。猟師の人にも色々と教えて貰ってはいたが、アイヌの知識とはまた違ったものだ。