【金カ夢】夢の中で……。【Golden Kamuy】
第2章 アシㇼパと
「「「かっこいいといえば、ユメコ(ちゃん)もなんだけどねぇ」」」
はぁ…。とため息を漏らすように声を重ねる給仕の娘達に、『ん?』と食事をしながら首を傾げる姿には、もう女将も慣れているようだ。
給仕係の娘達は、食堂で働いてる間にも殿方との素敵な出会いがあるかもしれないと、身嗜みを整え、化粧をしっかりと施していた。
対するユメコは長い髪の毛を一括りにし、この時代には珍しい洋装をメインにした、服装で動きやすいようにズボンを履いていた。
慣れない和服も着たりはするのだが、やはり動きにくいのだ。
先程も述べたように、大きめの胸は隠すように晒しを巻き、ほぼ平になっている。
化粧っ気もないが令和時代にきちんとスキンケアしていたのもあり、肌は綺麗で美しく中性的な顔立ち。
──この時代の女性にしては身長が高いので給仕係の娘達の間では『男装の麗人』と呼ばれているようだが、本人は一切知らない。
「ほらほら、さっさとご飯を食べな。ユメコは、今日は山へ出かけるんだろう?」
パンパン、と女将が手を叩きながら場の雰囲気を締め、ユメコに声をかける。
ユメコはここで働き始めてから、最初のうちは目が覚めると現代へ戻っているかもしれないと期待をしていたのだが、何度も朝を迎えるうちに、これはやはり夢では無いのだと痛感するようになった。そして、日々を過ごすうちに、自分は本当に未来にいたのだろうか?と疑問に思うように…。
もしかしたら、女将がいうように雪山で遭難し、高熱で数日間魘されているうちに記憶がおかしくなっていて、ありもしない未来を覚えていると言ってしまっているのかも知れないと。
自分が未来から来たというものを証明できるのは、ユメコの身につけていた洋服と下着しかないのだ。
そう考えると、自分が遭難していたと言われる雪山に、もしかしたら自分が未来に生きていたという証明ができる物が何か出てくるかもしれない!タイムマシンのようにどこか時空への歪みがあるのでは??など脳筋的な考えに至ったユメコは、慣れない雪山が危険だとはわかっていたが、自分の存在、未来を確かめるためだけに稀にある休みの日には雪山に入るようになっていた。