【金カ夢】夢の中で……。【Golden Kamuy】
第9章 囚人 辺見和雄
ユメコは1人だけお酒を飲んでいなかったので、白石と杉元が一緒に飲もうと誘ってくるが、朝から船に乗りクジラに引っ張られて気分が悪くなり、次にはシャチに引っ張られた船に揺られていたのだ。
更にそれに追い打ちをかけるように数十キロも離れたここまで歩いてきた。アシㇼパじゃなくとも、体力は元々この4人の中では1番少ないユメコにとっては、本当にキツい1日だった。
今のところは体調は良いが、お酒を飲んでしまうと、きっとすぐに体調が悪化するに違いない。
そう思うと、お酒好きだが呑むべきではないと判断し、アシㇼパの頭や身体を優しく撫でながら、やんわりと2人の申し出を断った。
断られると残念そうな表情をする男2人だったが、そんな雰囲気の中、突然手拭いを頭に巻いた老人が訪ねてきた。
ご老人は身体をぷるぷると震わせながら話しかけてくる。
『こんばんは。おじいさん、どうしたの?』
老人「あんたらヤン集に見えないねえ。旅行かい?」
杉「ええ、まあ……あなたも?」
老人「めんこい子じゃなあ〜ワシの孫と歳も同じぐらいじゃ。 だっこしても構わんかのう?」
『そうでしょう、そうでしょう。この子すっごく美人で可愛いんです!!』
ユメコは初対面の老人ではあるが、身内と思っているアシㇼパのことを褒められると機嫌が良くなりニコニコと嬉しそうに頷く。老人はユメコの膝枕で眠っているアシㇼパの両脇に手を入れると、抱き抱えるようにしてアシㇼパの顔を見つめるが、そんなご老人に対して杉元は
杉「眠いと機嫌悪いですよ」
と、それとなく注意を促していた。
老人「綺麗な瞳の色だ。よく見ると青のなかに緑が散っておる…。ロシア人の血が混ざっておるのかな」
寝惚け眼のアシㇼパがご老人と目を合わせながらそう呟き、ユメコも「なるほど、北海道だからロシア人の血が…」と納得していたところで急に白石が「ヒッ!!」と小さく、でもしっかりと息を飲む音が聞こえた。
杉「どうした?」
白「え?いやっ……」
老人「同じ目をした知り合いがいる」
ご老人はむにゃむにゃと眠気に勝てず、柔らかくしなる猫のようになったアシㇼパを膝の上に座らせ、抱き抱えるようにすると、頭に被っていたほっかむりを外した。