【金カ夢】夢の中で……。【Golden Kamuy】
第9章 囚人 辺見和雄
杉「はあ〜〜。シャチもヒンナでした」
『ご馳走様でした。佐一ってば、毎回本当に美味しそうに食べるよね。見てるこっちの方が幸せになるわ』
ア「あとでシャチの背筋をもらっておこう」
杉「背筋って美味いの?」
ア「この弓の弦はクジラの背筋で出来ている。背筋を乾かして叩き、細かく割いて作った弦は湿気や乾燥で伸びたり縮んだりしない。レプンカムイのならもっと強い弓になるはずだ」
アシㇼパは自分の武器である弓を構えながら、シャチの背筋について答えていく。弓の弦を弾きながら語る彼女は、とても勇ましい顔をしていた。そんな姿を見た白石が
白「アシㇼパちゃん、頼もしいネ」
と微笑ましく声をかけていた。
__
____
_____
辺見和雄と出会ったニシン場から数十キロ離れた別の番屋にユメコたちは辿り着いていた。
ガヤガヤと騒がしい番屋の中の部屋の一角で、お酒を呑みながら暖をとっているところである。
杉「寝床にありつけて運が良かったな」
白「海岸で野宿なんて凍死するだろ。酒も手に入ったし極楽だぜ」
『ううー、寒い中眠るとか無理!』
ゴクゴクッと喉を鳴らしながら美味しそうにお酒を呑む成人男性2人の傍では、疲れが出たのであろう、アシㇼパがコックリコックリと船を漕ぐようにして頭を揺らしている。
それを見かねたユメコが
『アシㇼパ、かわいい〜。ほら、私の膝使っていいからこっちにおいで?』
ポンポンと自らの膝を叩き、アシㇼパを招くとユメコは彼女を優しく横たわらせ、膝を枕とし、彼女の頭を優しく撫でる。
アシㇼパは眠いと機嫌が悪くなりやすいのだが、ユメコと普段から一緒に寝ているからなのか、それとも、同じ女性として安心してくれているのか、ユメコと一緒の時だけは毎回大人しいのだ。
ユメコが慈愛に満ちた顔でアシㇼパをあやす姿を見ると、なんとも言い難い気持ちになる成人男性2人。
白「ずるーい!!俺だって膝枕してもらいたい!!というか、ユメコちゃ〜ん、お酒呑まないの?」
杉「そうだよユメコさん、一緒に呑も?」
『ん〜、今日は止めとく。元々お酒は好きだけど弱いし、直ぐに顔も赤くなっちゃうからね。それに…今日は舟で散々な目にあったから、呑むとヤバそうで…。また今度一緒に呑もう』