【金カ夢】夢の中で……。【Golden Kamuy】
第9章 囚人 辺見和雄
杉元とユメコはホカホカ揚げたての鯱の竜田揚げに齧り付く。2人とも、はふはふと美味しそうに、だが熱くて食べられないという雰囲気を醸し出しながら食べ進めていくのでそんな2人を優しい顔で見つめる白石は、若干ユメコの熱がりながら食べる姿をみて「(ユメコちゃん、食べ方が…なんか艶っぽいな)」と思っていた。
杉「うんうん、いけるぞこれ!」
白「下味がうまくいったな!それに動物の油で揚げたから外がパリパリだ」
『サクジュワだよー…はあ、美味しい』
ア「……」
白「アシㇼパちゃん食べないの?」
3人がサクサクと竜田揚げを食べすめていく中、食べ物のことばかり考えていそうなアシㇼパが、先程から食事に手を付けずにいる。心配した白石がアシㇼパに声をかけると
ア「このシャチは人を殺した悪い神だから食べられない」
杉「アシㇼパさん、辺見和雄に致命傷を負わせたのは俺だ…俺が殺したんだ。だからそのシャチは──」
ア「そうだな」
真顔で俺が殺したからと、このシャチは悪くない。だからご飯を一緒に食べよう。と勧める杉元の言葉にアシㇼパは食い気味に返事をすると、先程まで大人しかったのが嘘かのように、モリモリ、バクバクっと勢いよくご飯を食べ進める。
ア「別にこのシャチは辺見を食べたわけじゃ無いしなッ。人を食ったウェンカムイ食べるなっていうのは単純に気持ち悪いからかもな」
ヒンナヒンナと食べ、箸が止まらない状態のアシㇼパを、杉元は真顔で見つめている。先程までアシㇼパの為に気を使っていた彼だったが、馬鹿らしくなったようだ。
ア「そもそも人を殺して食べたヒグマをウェンカムイと呼んで必ず討ち取りこらしめるのは、人の弱さを知って人肉の味をおぼえた危険なヒグマを野放しにしないためだったりするんだ、きっと。だからヒグマ以外はウェンカムイとは言わないんだ多分。」
杉「竜田揚げ、食べたいからってアイヌの教えを都合よく解釈するんじゃないよ!」
『あー、でも1度人肉を食べてしまったヒグマは、人間が弱くて美味しいって味をしめて、何度も狙うらしいね。昔テレビで見た事があるよ』
「「「…てれび??」」」