【金カ夢】夢の中で……。【Golden Kamuy】
第2章 アシㇼパと
今日は月に数回ある特別な日。
私の手料理が食堂のおかずの1つとして出される日である。
──と、言っても私は厨房で働く身であるので、お客さん達からの評判などは分からないのだが…。
ホールで給仕係をしている年の変わらない女の子たちや、女将さんから手が空いた時にその日にやってきたお客さんたちの話を聞くだけでも楽しいものである。
「今日も【あの】軍人さんたちが、ユメコちゃんの手料理目当てに食べに来てたよ!!」
「はぁ〜、今日も見目麗しかったわぁ。」
「あの軍人さん──褐色の君。きっとどこぞの令息様に違いないわ。こんな庶民の食堂に来るなんて場違いな感じもするけれど、何をするにもその作法、動作が綺麗なのよね…。」
「ユメコちゃんの手料理が出され始めてから来るようになったけど、本当にいい男なのよ!!」
「そうそう!顔も整いすぎて近寄り難いんだけど、褐色の君だけじゃなくて、一緒に来店される方々もまた違ったタイプの男性で魅力的なのよ!」
1番忙しい時間帯を何とかやり過ごし、卓を片付け。
休憩時間ともなると、キャッキャウフフと、仲良くなった子達が賄いを食べながらユメコに話しかけてくる。
『そ、そうなの??…うーん。みんなが言うほどカッコイイ男性たち、というのは厨房にいる私には分からないけれど、そんな話を可愛らしい顔で話すみんなを見てると、とても幸せな気持ちになるよ。』
明治時代に来てからはブラジャーや下着がないのに少しづつ慣れ始めたものの、下着がないと心もとないので、胸を潰すように晒しを巻き、なれない裁縫をやりながら何とか下着を作り、身に纏っていた。
慣れない器具で厨房の作業をする際にも胸や慣れない服装が邪魔になることがあるのだ。
少しでも動きやすいことに越したことはない。
胸あたりまで伸びた黒い髪の毛を後ろで無造作に紐で一括りにしているユメコは、一見すると中性的で、美しい男性のようにも見える。
令和に生きるユメコは、明治時代の男性や女性が現代の人よりも身長が低いというのもあるせいで
一般的な明治時代の女性よりも身長が高く、やはり同じ食堂で働くもの達からしても性別は知っているものの、男性のように見えていたし男前な発言をすることから同性であるユメコに憧れを抱くものも多かった。