【金カ夢】夢の中で……。【Golden Kamuy】
第9章 囚人 辺見和雄
杉「ちくしょう、このクソ冷たい海に飛び込むのかッ。オイ止まるなよ俺の心臓ッ」
『(佐一、この冷たい海に潜るつもり?・・・私も、手伝う?いや、無理だ。泳げるかどうかも分からないし足手まといなるだけだ…)』
ユメコが杉元の助太刀をするべきかどうか悩み、物思いに耽ってる間、杉元は自らを鼓舞するように胸元をドンドンと叩き、アシㇼパは自身の目を覆うユメコの指の間のスペースを空け、まじまじと観察するように裸になった杉元をみている。
杉「アシㇼパさん見ないでッ!!」
ドボンッと大きな音を立て、杉元が冷たい海水へと潜っていく。
ユメコはその音に気がつくと、アシㇼパの顔を覆っていた手を離した。
ユメコが手を離すと同時に、アシㇼパはクジラを獲る時に使用したものと同じモリを準備しはじめた。
シャチが現れ、危険だと判断した際に使うようだ。
『それ、私にやらせて』
アシㇼパの方が狩りの経験が豊富な先輩だが、肩の力は私の方が強いと判断し、アシㇼパからモリを受け取ると、揺れる船の上でゆっくり立ち上がり、モリを構えた。
すぐにモリを打てるような体勢を整え、海を見つめる。
杉「ぶはっ」
暫くすると、ボコボコと海面に泡が浮き上がってきて、杉元が顔を出した。
杉元は脇に辺見を抱き抱えているようだ。
白「来るぞ杉元ッ早く舟に上がれ!!」
白石が杉元と辺見を船にあがらせようとしていると、すぐ後ろからシャチが獲物を取り返すために顔を出す。
白石が2人を舟に乗るのを手伝っている間、ユメコはアシㇼパに指示を出してもらい、タイミングを見計らうと勢いよく構えていたモリをシャチに打ち込んだ。
──ドッ
モリは鈍そうな音を立て、深々とシャチに突き刺さる。
その間にも2人は無事に舟に乗り込めたようだ。見事にシャチを打つことが出来、安心したのだが、ホッとしたのも束の間
ア「引っ張られるぞっつかまれっ!!」
『……え?ぐあっ!!』
モリを打ったばかりのユメコは、立った状態のままバランスを崩し、勢いよく後方へとひっくり返った。
白石たちも同じようにバランスを崩し、後方へと転がる。
1歩間違えれば海に落ちていたかもしれない。