【金カ夢】夢の中で……。【Golden Kamuy】
第9章 囚人 辺見和雄
毛布の下でゴソゴソと冷たい海水に浸かり重く濡れた服を全て脱ぎ全裸になった辺見は1人葛藤していた。
今ここで、杉元たちに自分が入れ墨をいれた囚人であることを暴露すべきかどうか。
辺「(いやダメだダメだッ!!自分から入れ墨を見せるなんて…自殺と同じじゃないか。僕はあくまで必死に抗わなきゃいけないんだ。弟のように)」
杉元から借りた毛布にくるまりながらフリフリと何度も首を横に振り、自問自答している辺見。彼の後ろ姿しか見えていない杉元たちには寒さで震えてるように見える。
叔父「杉元!私はひとりで白石たち追ってみる。後は任せた!アシㇼパとユメコの面倒も頼んだぞ」
『えー、私まで子供みたいな扱い?』
杉「わかった!」
同じ船に乗っていたアシㇼパの叔父さんは、クジラや、仲間のアイヌが心配なようで先程まで乗っていた舟に再度1人で乗り込んだ。
叔父さんのセリフに、杉元が頷く。
その間、辺見は気配を消し、気づかれないように、そーッとどこかへ向かい歩き始めていた。
杉「もう大丈夫なのか?」
辺見が歩き始めたことに気がついた杉元が声をかける。
ユメコも背中を向けていたが、辺見が動き始めたことに気が付き、振り返る。
『あまり動かない方がいいのでは?』
辺「あ……おかげさまで平気です。番屋に僕の着替えがあるので…」
『あ、すみません。気が回らなくて!』
彼はオドオドとしたまま、建物を指さし、着替えを取りに行くと言う。確かに彼は裸のままだったので、着替えがいるはずだったが、そこまでは気が回らないでいた。
『(着替えがすぐ近くにあって良かった)』とユメコがホッと息をつく。
そのまま彼が着替えるのを建物の外で待っていた一同。すると杉元が
杉「今日泊まる場所のこと考えてなかった!聞いてみよう」
と言うと、番屋の窓ガラスに近づく。
ちょうど彼の姿が見えたので、杉元が窓をコンコンとノックする。
窓を開けて「何でしょう?」と、顔をのぞかせる彼に問いかける。
杉「ここの番屋って漁場で働いてる人しか泊まれないのか?宿代分だけでもここで働けねぇかな?」
「あとで親方に頼んでみますよ」