【金カ夢】夢の中で……。【Golden Kamuy】
第8章 ニシン漁へ
青白い顔をしたままの漁師に対して杉元は親切に声をかけ続ける。
杉「濡れた服もそこで全部脱いじまえよ」
「え…!?ここで服を?(さっきのはまちがいなく白石由竹さんだ。この兵隊さんたちは、たぶん仲間…。僕がまいてきたエサにつられてここまで入れ墨の囚人を探しに来たに違いない……)」
杉「肌着も脱いじまえば?」
助けた漁師──辺見は、杉元たちが探している囚人だった。
しかし、入れ墨の囚人たちの顔は、同じく囚人であった白石しか知らない。
辺見が囚人であることなど、ユメコたちには知る由もないのだ。
辺「あの…なんというか、見られてる前で全部脱ぐのは恥ずかしいです」
顔を赤らめながら頬をポリポリとかく辺見。囚人である彼からすれば、白石の仲間だと思われる杉元たちに入れ墨の入った肌を見せる訳にはいかない、と考えていた。
杉「へ?恥ずかしい?」
ア杉「「『……』」」
辺「(まずい……かえって怪しんだか?)」
杉「毛布使う?」
『…あ、この布も腰宛にどうぞ。他にもなにか必要なものは、ありますか?』
杉元とユメコは、辺見が人目を恥ずかしがって脱げないと思い、布や毛布を手渡す。ユメコは異性が裸になるのを見る訳には行かない。ましてや、この漁師は恥ずかしがっているのだ、少しでも安心させるべきだと、手渡したあとは背中を向ける。
辺「(優しい!!)」
毛布や布を受け取ると、その中でモゾモゾと服を脱いでいく辺見。
辺「(やさしいな…このひとたち。違うのかな?囚人を殺しに来たんじゃないのかな?でもなぜか気になるこの雰囲気…。そう……この軍帽のひとからは僕と同じニオイがする──人殺しのニオイだ)」
すんすんと鼻を鳴らす辺見。
後ろに立ち、服を脱いでいく辺見から視線を外している杉元をチラッとみる。
辺「(このひとなら残酷に僕を殺してくれるだろうか。僕がやってきたみたいに。弟を喰ったあのケダモノみたいに…。ああもう……いっそのことここで見せてしまおうか!!)」