【金カ夢】夢の中で……。【Golden Kamuy】
第8章 ニシン漁へ
叔父「引っ張り上げるぞ!!」
杉「頑張れ、しっかりつかまれ!!」
杉元と叔父さんが声を掛けながら引き上げた漁師は、気を失ったりはしていなかったが、顔色が悪く、寒さにガタガタと震えていた。
「急げ!!岸の漁場にはニシン加工用の焚き火があるはずだ」
漁師を引き上げると、すぐさま舟を方向転換させ、先程までいた漁場に向かう。
先程までとは違い、自分たちで漕いで岸まで戻るので、ユメコの体調も少しづつ回復していった。
助けた漁師の濡れた身体を心配し、ある程度気分が回復したユメコは漁師に近づくと乾いた布をで彼の身体を包むように服の上から拭いていく。
彼はお礼を言いながらも、海水で溺れて死ななくてよかったと呟いていた。
「ありがとう…ありがとう………海に落ちて死ぬなんて、こんな死に方…絶対イヤだ……」
「こんなつまらない死に方………」
───彼がボソリと小さく呟いた言葉は潮風と波の音にかき消され、船に乗っていたものたちには届かなかった。
一方その頃白石は、舟に乗ったまま。クジラの綱に引きずられている最中である。
白「いつまで乗ってりゃいいんだ?」
「フンペ(鯨)が毒で弱まるまでだ!あと一日か二日…運がよければ自分で岸に突っ込むかもしれん」
白「帰っていい?」
クゥンという音声がつきそうな悲しそうな顔をしたまま、いつ帰れるか運次第だという返答に絶望していた。
──
───
────
漁場についたユメコ達は、落ちた漁師を引き連れ、釜戸らしきところで漁師に暖をとらせているところだ。
「ふううう暖かい…。命拾いをした」
釜戸の火を正面に受けながら暖まっている漁師。
後ろの方でその様子を見守っていると、杉元が彼に声をかける。
杉「「背中あぶり」といってな、背中を暖めたほうがいいんだぜ。セトル……なんだっけ?アシㇼパさん」
ア「セトゥルセセッカ」
「背中あぶり」と聞けば、ちょっと豚の丸焼きなどを想像してしまったユメコだったが、アシㇼパの口から出た単語を聞くと、
『(アイヌ語かな?まるで外国語だ。)』
きっと自分がその単語を喋る時には舌をかみそうだ…とも思った。
「そうですか…」