【金カ夢】夢の中で……。【Golden Kamuy】
第1章 プロローグ
どうにもこの女将がいうことを纏めてみると、ここは北海道。
今は明治時代で、私は4日ほど前に倒れていたのを発見されたらしい。
──えぇ、私も信じられない。
九州から北海道へどうやって運ばれてきたのかと。ましてや、明治時代とはユメコが生きている時代よりも、100年ほど前の時代のはずだ。
『……明治時代…?』
そんな壮大なドッキリを一般人の私にするなんて、なんて手の込んだテレビ番組なのだろうか。
それともただ単にユメコが知らないうちに誘拐でもされ、雪山には証拠隠滅のために投げ捨てられたのだろうか…。
しかし、わざわざ九州から北海道まで連れてきて、北海道の雪山に捨てるだろうか?…などと1人で悶々と考え、黙り込むユメコの姿に、女将さんは心配そうに顔を覗き込んできたので、先程名前を聞かれたなと、グダグダ考えるのをやめて名を名乗る。
『私の名前はユメコ。夢乃ユメコと申します。』
九州出身である自分がどうして雪山にいたのか分からないこと、どこぞの貴族令嬢ではなく一般庶民であること。など、とにかく自分が分かる範囲で女将に伝えてみたが、『明治時代なんて嘘ですよね?』と笑いながら言ったら、変な顔をされた。
「高熱のせいで記憶が無くなってしまったんだね…」
と、可哀想な子をみるような目で見られてしまい、再度『…そんな馬鹿な』と心の中で呟いた。
体力が回復するまではここで寝ておきなさいと、女将とその旦那に世話になり、数日後には起き上がれるほど元気になった。
数日間過ごしたところで、やはりここは夢でも、自分が知っている時代でもないのだなと、嫌な程痛感した。
窓の外から見える街の景色は見知った時代とは全く異なっていたし、ビルは勿論、キラキラと輝くネオンのようなものもなかった。
洋服を着てる人達もいるに居るのだが、ユメコの知っているようなTシャツやジーンズ、スカートと言ったものはあまり目にすることがなく、殆どの人が和装と言われる服装や髪型をしている。
電話をかけさせて貰えないかと思ったが、携帯電話は勿論、見知った電話はなく、風呂場も風呂屋に行かなければ行けないものだったし、トイレも水洗式ではなく、ポットントイレだった。
何もかもがユメコにとっては衝撃的すぎた。