【金カ夢】夢の中で……。【Golden Kamuy】
第4章 巻き込まれる
2人で「アイヌ語で「感謝」などの言葉を現す【ヒンナ】を美味しいの代わりに使い、「ヒンナヒンナ」と食べ進めていると、外が急に騒がしくなってきた。
何事かと思う間もなく杉元が立ち上がり、入口付近へと足早に歩いていく。
ユメコは、よく分からないままそんな行動に移った杉元を見ていると、軍服を着た男が2人、店の中を覗き始めた。
「どの男だ?」
「入れ墨を探っている奴は」
男の後ろには、この蕎麦屋の女将がいて「軍帽の兄ちゃんさ」と話していた。どうやら、軍人を呼んだのはここの女将らしい。
しかしながら、そんなことよりも暖簾下から覗く二人の男たち、顔がそっくりである。
『(双子…?)』と思う間もなく、すぐに助走をつけた杉元が、軍服の男二人に跳び蹴りを食らわせる。
『(は、何事!?!?)』
杉元の急な行動に、頭が着いていかず呆然としてしまったが、その間にも外からは凄まじい音が響きわたり、入口から見えるだけでも、杉元が殴られそうになり、逆に殴りかかってきた男に掴みかかり、投げ飛ばすところが見えた。
現状を理解するよりも早く、怖いという恐怖心よりも先に、武器を持つ軍人に向かっていった丸腰の杉元を止めねばならぬという気持ちが沸き立ったユメコは、流し込むように慌てて残り少ないにしん蕎麦を飲み込むと急いで外に出た。
ユメコが店を出たその瞬間、銃声が響き渡る。
周りを見渡すと、血を流す兵士と、先程の双子らしい男たちに銃を突きつけられ、地面に横たわり、鼻や口から血を流している杉元が目に入った。
そして、銃声の音をした方に目を向けると、つい先日会ったばかりの鶴見中尉がニヤリと笑いながら、こちらを見ていた。