【金カ夢】夢の中で……。【Golden Kamuy】
第4章 巻き込まれる
鶴見中尉達から話を聞かれたその後は、特にこれといったことも無く、数日間過ごしていた。
本来であればアシㇼパに会いに、コタンへと遊びに行ったりしているはずだったが、それなりに食堂も忙しく、まとまった時間を取れずにいた。
ユメコは、仕込みのために街を歩いていると、知らない間にアシㇼパと聞き込みをしていた蕎麦屋が並ぶ通りに足を運んでいた。
無意識のうちに来てしまったとはいえ、客引きの女性に男性と間違われるのも困るので、足早に去ろうとしたところで、見た事のある後ろ姿をみつけ、思わず声をかけた。
『佐一…?』
「ん…?あー!ユメコさん、どうしてここに!?」
蕎麦屋に向かって歩く杉元にタイミング悪く声をかけてしまったらしいと気がつく。彼も男だ、そういう事である。
慌てて『ごめん』と踵を返そうとしたら、
「違うから!思ってることと絶対に違うからね!!」
と杉元が顔を赤くしながら首を横に振っていた。
どうやら、先日の入れ墨についての情報があり、この蕎麦屋で話を聞くためだったらしい。
「折角だから、ユメコさんも一緒にご飯を食べていかない?」
と、未だに顔に赤みが残る杉元に提案されれば、それもいいかと思い同行することにした。
杉元と一緒に蕎麦屋の暖簾をくぐり店に入ると、蕎麦屋の女将がオススメという「にしん蕎麦」を注文した。
蕎麦が届くまで、二人で他愛のない話をしつつ、アシㇼパのことを尋ねると、
「アシㇼパさんとは別行動している」と、返答があった。
やや待って、注文していた蕎麦が届くと、蕎麦の上に鰊が乗っていた。蕎麦を食べはじめると、美味しい にしん蕎麦にテンションが上がったのか、舌鼓をうちながら急に杉元の食レポがはじまった。
「ツユが濃くて、関東生まれの俺好み」だとか「口の中でほろほろとくずれるこのニシンの甘露煮は絶品だ」と言うので、杉元に関東生まれなのかと尋ねると、逆に出身地を聞かれた。
そういえば彼には名前しか言っていなかったな、と思いユメコは九州出身だと答えると、意外そうな顔をされた。
『北海道に来たのには、色々あってね…』と濁すように答えると、それ以上杉元は深入りをしてこなかった。
「こいつぁ、ヒンナだぜ!」
杉元がにしん蕎麦を美味しそうにたべるので、その意見に同意しながら箸をすすめた。