【金カ夢】夢の中で……。【Golden Kamuy】
第3章 杉元、第七師団との出会い
彼の話を聞いていると、どうやら彼もユメコが働くお店に通ってくれているらしいので、少し大通りから離れたユメコ働く食堂へも、迷うことなく迎えにこれたらしい。
ユメコの働く食堂で出される料理が美味しいのはもちろん、その他の理由の一つとして、九州出身の上司がユメコの働く店で偶に出される九州特有の少し甘めのおかずを楽しみにしているから、とのこと。
それを聞くとユメコは嬉しくなって
『第七師団の方にも九州出身の方がいらっしゃるんですか!?私も九州出身なんです。それに、多分…その稀に出てくるおかずって、私の作っているものだと思います。自分の作った料理をそのように言って頂けるなんて、凄く嬉しいです。ありがとうございます』
と、厨房で働くユメコは、直接食べた感想をお客様から聞く機会も無かった為、ニコニコと月島に笑顔を向け、礼を述べた。
意外な接点があったものだと話していると、あっという間に兵舎に到着した。
兵舎につくなり月島に挨拶をするもの達が出てくるので、軍曹と呼ばれる階級の彼もそれなりに上の立場の人間らしいことがわかった。
月島軍曹のあとをついていき、鶴見中尉の待つ部屋に通されると、月島軍曹以外にも隊員が鶴見中尉の横で待機していた。
鶴見中尉に相対する席に座るよう促され、着席すると「甘いものは好きかね?」と、お茶と甘味を勧められた。
勧められた甘味は、街でも美味しいと有名な老舗のもののようだ。
出されたお茶を啜り、ホッと息を吐き出すと、こちらを見ていた鶴見中尉に改めて隊員を助けたことで礼を言われた。
助けた彼、オガタジョートーヘーは、かなりの重体で、1度目を覚ましたようだったが、すぐにまた気を失ったらしい。
大したことは出来ていなかったはずだが、あれだけ弱りきっていた彼が生きていると知り、安堵した。
「……そうそう、夢乃さん。【ふじみ】、という言葉に聞き覚えは?」
鶴見中尉が口に入れた甘味を咀嚼しつつ、観察するようにジッとこちらを見つめ問いかけてきた。
ユメコは「ふじみ」という単語が何を表すものか分からなかったので、首を横に振り、素直『わかりません。』と答える。