【金カ夢】夢の中で……。【Golden Kamuy】
第3章 杉元、第七師団との出会い
時折、軍服の男の瞼がピクっと動き、目を微かにあているようにも見えたが、意識も朦朧とした中で警戒しているのかも知れない
『怪しいものじゃない』
『心配しないで』
『貴方は私が助けるから』
と、など思いつく限りの言葉を口に出し、必死に声をかけ続けた。
しばらく経ったが男の体温は一向に上がる気配がない。
どうにかして温めねば。そういえば体温を上げるためには人肌が1番良かったはずだ。──と考えると同時に脳筋なユメコはすぐに行動に移す。
軽く着込んでいた服を再度脱ぎ、上半身だけ裸になると、『…すまない』と、横たわる男に断りを入れるように声をかけ、肌を密着させていく。
さすが異性の前で服を脱ぐなんてこと、今までやったこともないし、まさかこんなふうに誰かを人肌で温めるような機会がやってくるなんて思ってもみなかったことだが、幸い相手は意識が朦朧としているし、人命救助の為だ。
迷っている暇なんてない。
今しがた脱いだ服は少しでも体温をあげるため、自分と男に掛け布団のようにかけた。
青白い男の肌が自分の肌に触れるだで、凍てつくようだ。
体温を奪われている感覚があったものの、目の前で死にかけている人間を助けるにはこれしかないと、羞恥に悶えながら、何度も自分に言い聞かせた。
ピッタリと肌を密着させつつも、男へ負担がかからないように優しく抱きしめる
──どれぐらいの時間がたったのか。
松明らしき火が、ゆらゆらと木々の間から見えたかと思うと、声らしきものも聞こえてくる。
人がやってきたのだと分かると、慌てて男から離れ、サラシを巻き、身につけてきた洋服を着る。
どうやらこの男を探しているらしいと判断すると、『助けてください』と声を上げた。
松明の光が近づいてきたかと思えば、銃を携えた軍人ばかりで、ユメコは驚愕した。
よく良く考えれば怪我をしているこの男も軍人のようだったので、当たり前だと言えば当たり前なのだが…。
こちらに向かって歩いてきた軍人達が、何故か銃口を向けてきたので、慌てて立ち上がり、怪我していた彼をみつけ、介抱していたのだと弁解させてもらった。
胡散臭いと言わんばかりの顔つきだったが、怪我人に視線を向け、介抱していたことがわかると、どうやら信じて貰えたらしい。
怪我をしている軍服の男を、軍隊の人達に引き渡す。