【金カ夢】夢の中で……。【Golden Kamuy】
第3章 杉元、第七師団との出会い
『はじめまして、杉元さん。夢乃ユメコです。アシㇼパとは私も大切な家族だと思ってます。よろしくお願いします。』
「はじめまして、ユメコさん。怖がらせてしまってすまない。杉元佐一です。俺のことは呼び捨てで構わないよ。さん付けなんて慣れてねぇんだ……。えぇーっと…俺は、なんて呼べばいいかな。さん?君?呼び捨て??」
ちょっとした、大型犬のような親しみのある顔つきになった杉元は年相応の笑顔だ。
先程までの顔付きとは真反対の彼の反応に驚きながらも手を差し出すと握手で挨拶を交わす。
『ありがとう。私のことは好きに呼んでくれ。』
ふふふっ、と笑いながら杉元と呼ばれた男を見やると、ユメコの性別が分からないらしい。
敢えて性別を言わなくてもいいかもしれないと思っていたら、横から「ユメコは女だぞ」とアシㇼパがしれっと口を出す。
女だとわかると、杉元と呼ばれる男は「えぇ!女の人!?ならやっぱり、さん付けかな…?」と言い出したので、こちらも呼び捨てで構わないと伝えた。
アシㇼパが懐く人なら悪い人じゃなさそうだからである。
『よろしくね、佐一』
改めて下の名前で呼ぶと、それはそれで呼ばれ慣れていないらしく、顔を赤くしながら頷いていたので、杉元佐一は女慣れしていないのだと勝手に思った。
そんなふうにお互いの呼び方を決めつつも、3人で手分けして入れ墨について聞き込みを行ったが、それらしい情報は一切入ってこなかった。
「今日はここまでにして、また明日出直そう」
と佐一が言うので、私は2人と別れて店に戻った。
女将さん夫婦にお礼を伝え、店の仕事が残っているようで、それを手伝った。
ユメコは手伝い乍も考えていた。
何故アシㇼパと佐一は入れ墨の入った人間を探しているのか。理由を聞いていなかった、と。
以前コタンに行った時にそんな話は聞かなかったし、アシㇼパが探している入れ墨の入った人間を、同じように探す男が別にいるのであれば、アシㇼパたちと敵対するものかもしれない……等と、勝手な胸騒ぎを覚えてしまった。
そろそろ山に入ろうかと考えていたのもあり、帰宅するとユメコは準備を済ませ、アシㇼパたちを追いかけるように山へと向かった。
きっとあの二人はコタンに帰ったに違いない。