【金カ夢】夢の中で……。【Golden Kamuy】
第3章 杉元、第七師団との出会い
腰につける短刀を鞘から素早く抜くと、持ち手の部分でアシㇼパは男の目に狙いをつけ、殴った。
男は痛みに悶え、アシㇼパを手放す。
それを見ていた女性二人は男性に恨みでもあるのだろうか、笑いながら、もっとやれ!とばかりにアシㇼパを応援していた。
ふと気がつくと、用心棒らしき男の背後から別の男が現れた。
新手の男は軍帽を被り、顔には「サ」の字のような傷がある。用心棒のひとりだろうか、加勢に来たのかと思わず身構えてしまい身体に力が入る。
「おい。俺の親指をミロ」
新手の男は、右手の親指に意識を向けさせると用心棒の大男の喉仏を親指で突いた。
一瞬の隙をついた攻撃に、大男が不意をつかれ、息が出来なくなるとすぐに「質問に答えろデカブツ」と言い放ち、アシㇼパが苦しむ大男に向かって不思議な模様が描かれた紙を目の前に差し出す。
2人の一連の流れに、『あれ、アシㇼパの知り合い?』と思いながらも、さすがに水を差すようなことを口出しできない雰囲気なので、一人で首を傾げた。
大男は別の男にも同じように入れ墨について聞かれたことがあると、苦しそうな顔で、ぽつりぽつりと話す。
用心棒の大男から話を聞き出すと、ニヤリと笑ったサの時の男とアシㇼパは颯爽とその場を立ち去ろうとするので、ユメコは売春屋の女性と男性にぺこりと頭を下げ、追いかけた。
「杉元、紹介しよう。ユメコだ。ユメコは私の家族のようなものだ。大体2人は同い年ぐらいだろう?ユメコに変なことをしたら殴るからな!ユメコ、コイツは杉元。狩りの途中で知り合った。」
アシㇼパの後を追いかけながら少し歩いていると、サの字の男がユメコのことをストーカーか何かと思ったのか、初対面だが威圧感のある顔つきで睨むように見てきたので、殺気を放たれたのかもしれない。突然のことに体が勝手にビクッと反応してしまった。
そんな私のことを見ると、「そういえば紹介していなかったな。」と、殺気などまるで気にしないようにアシㇼパが私の方に向き直り、軍帽を身にまとった傷の男のことを教えてくれた。
アシㇼパが杉元に私のことを家族のように思っていると伝えると、ホッとした表情をする彼。
どうやら警戒心を解いてくれたようだ。