【降谷零】SPARK × PUNK【名探偵コナン】
第4章 「元整備士」×「マスタングGT500」
絞り出すような声でいたい、痛いと口をこぼし、激痛に耐えながら目じりに涙を溜めた。
まるで痛みを逃すかのようにギリギリと男の手首に爪を立て何度も男の手を払うような抵抗に男は「君が死んではこちらも困るんでね」と今度は自身の上着を脱いで腹部へ当てると再び圧迫止血を始め力が入るたびに激痛に襲われる繰り返しだった。
「シュウ‼」
するとルカちゃんの声と同時に土手を滑り落ちる音が聞こえた。
そうか、彼がFBIということはルカちゃんも自然とFBIと言うことになる。
まさかFBIの彼女も潜入していたなんて―――。
「今、救急車を呼んだわ。それより容体は?」
「肩と腕は比較的軽傷だ。腹は今止血している、問題ない。それよりジョディ、上着を貸してくれないか。指先が震えている」
問題なくねーよ。なんてそんなツッコミを入れているとルカちゃん……否、ジョディと呼ばれたFBIの女が上着を脱ぐと横たわっている私に優しくかけると今度は男の手を掴んでいた手を取りぎゅっと握りしめた。
「すごく冷たいわね、大丈夫よ。すぐ救急車が来るから」
エメラルドグリーンの眼が私を力強く見つめていた。
〝絶対に助ける〟
そう言われた気がした。
悪い人達では、……………なさそうかも。
そう思いながらゆっくりと目を閉じて息を吐くと、ドンッと脈が弾み全身の血が熱くなるような感覚にハッと目を見開いた。
遠くから救急車のサイレンが聞こえ始めるとジョディさんが走って土手を上がっていく。
異様に当りが静かになり、そしてうるさくなるのが分かった。
雨の音も救急車のサイレンも、川の音も聞こえない。段々と聞こえてくるのは大きくなっていく自身の心音。
落ち着いてきた呼吸が、再び口から短い息が続く。ハッ、ハッ、と声が出始めた時男がその異変に気が付いた。
「おい、どうした…………おい!」
落ち着いてきたはずの容体の急変に男が顔色を変えた。
男の質問に答えられないまま、私はただ荒い呼吸を繰り返すだけ。
すると男が何かを察したかのように腹部から手を離すと止血に使用していた自身のジャケットを退かした。