【降谷零】SPARK × PUNK【名探偵コナン】
第1章 「整備士」×「RX-7」
「それとこれ、この前誕生日でしたよね。もうじき秋も終わりますし、宮下さん今年は新しいマフラーを買おうかとお話ししていたので」
勝典さんの背後から私の目の前に現れたのはあの有名ブランドの紙袋。思わずギョッと目が飛び出た。自分もお金がないわけではないが、というより給料は他より全然いい方だけど、今まで高級品に手を出したことなんて一度もない貧乏性の私には身に余る品だ。
「そんな高価なもの…」
「あなたの為に選んだんです、むしろ貰ってください」
「あ、ありがとうございます。なんかすいません、毎月いろんなもの頂いてしまって…」
「いいんですよ、僕の気持ちです」
押しに負けペコペコと頭を下げながら紙袋を私はおとなしく受け取った。
ついでにメンテナンスの終わったリムジンでパーティーへと向かうらしく、執事さんから預かっていた車のキーを手渡し、その間に「外出中乗る前に、特に寒い日はボンネットを軽く叩いてから乗ってくださいね」と念を押しながら二人をガレージへと案内する。
するとガシャンゴシャンと遠くから妙に聞き覚えのある嫌な音が微かに聞こえ振り返った。そこにはいつも通りの敷地の庭とそれを囲む林と私道が広がっている。
いいや、間違えるはずがない。この音を聞いた日から数週間、最悪一ヶ月、私はまともな生活をした覚えがない。
確実に、――嫌な予感しかしない。
確信したかのように私は二人を先に行かせてその場で立ち止まる。そのまま敷地の出入り口である私道を見つめながら呆然と立ち尽くした。そして肉眼で何かが見えるようになった瞬間、私は想像通りの、いや――想像を遥かに超えた光景に思わず顔を引きつらせた。
大きなキャリアカーが右折し敷地内の庭へと入って来る。その後ろには一台の身に覚えのありすぎるボロクソになった白のマツダのRX-7。ここまではいつも通りの光景だ。
ただ、見るからに前回よりも酷い有様だ。ドアは片方ないし、根元から逝っちゃってるもん。いいや、もしかしたら廃車の依頼かもしれない。そうだ。絶対にそうだ。