【降谷零】SPARK × PUNK【名探偵コナン】
第1章 「整備士」×「RX-7」
「か、勝典様⁉」
「え⁉」
その名前を聞いた途端、執事さんと同じく慌ててガレージから庭へ出るとそこにはいつの間にかタクシーが止まっていた。後部座席のドアが開き「おつりはいらないです」と運転手に声をかけると黒のリムジンの主である勝典さんが小走りでこちらに向かってくる。
すでにパーティー衣装に身を着飾っており髪型もいつものセンター分けと違いオールバックにがっちりとセット済み、どう考えてもここへ来るような格好ではない。
鈴木治郎吉さん主催のパーティーに行くと言っていたはずなのに、そんな大切な用事の前にわざわざこんな離れまで来るとはさすがの私も驚く。これが心とお金の余裕というやつなのか。
「どうされたんですか!? 今日は鈴木治郎吉さんのパーティーに行くとお聞きしましたが…」
「行く前に君に会おうと思って、パーティーなんていつでも行けますので」
「あ、気をつけて下さい! 私今汚れてるので…」
皮手袋を外しながら勝典さんのところまで駆け寄るがさっきまで作業をしていたことに気づき、慌てて駆け寄っていた足を止め手を前に突き出しながら近づいて来る勝典さんと距離を取る。さっきまでオイルも触っていたし、あんなお高いスーツ汚したら大変だ。
「そんなこと、僕の前では気にしなくていいですよ。気になるのであればこれで拭いてください。」
そう言いながら勝典さんは胸元のポケットからハンカチを取り出すと私の腕を引きポンッと手の平に置いた。思わず『半袖来ててよかったぁ…』と声が漏れそうになる。長袖だったらきっと汚れてたに違いない。
モノグラム柄をしたハンカチに一度は躊躇ったものの、謝ってスーツを汚してしまうよりはマシかと遠慮なく私はハンカチで手の汚れを拭きとった。