【降谷零】SPARK × PUNK【名探偵コナン】
第1章 「整備士」×「RX-7」
「す、すごい壊れ方ですね…」
声のする方へ振り返れば先に送り出したはずの勝典さんがボロボロになったRX-7を見てそう呟いていた。普通、誰でもこういう反応になる。むしろこれで驚かない人は人間じゃない。
やって来たキャリアカーが庭に止まると助手席から降りて来たのは褐色の肌に金髪のあの男。
逆に愛車を廃車寸前まで破損させて平然とした顔で修理にやってくる彼はもうとっくの昔に人間でなかったのかもしれない。ましてやそんな人が警察官なんて誰が想像できる。
重い脚を引っぱたいて
未だボロボロになったRX-7を見つめ唖然とする勝典さんの目の前を通り彼の元へと気だるげに駆ける。対して彼はこちらに呑気に歩いて来ると「宮下」と、口を開いた。
「降谷くん、廃車の手続きだったら…」
「どこを回っても治せないとたらい回しなんだ」
「当たり前だろ」
降谷くんのそのセリフに思わず真顔で突っ込んでしまった。年上なのに。
一体何回目だ、何回聞いたんだこのセリフ。『治してくれ、君しかいなんだ』と遠まわしに言わんばかりのセリフ。もはやテンプレート化している。慈悲というものがないのはこの男は。ここまでくれば金を払えばいいと言う問題ではない。
「あの、言いましたよね私。あのパーツ次壊れたらもう手に負えないって、絶対完全に壊れてますよねこれ。こんなボロボロになっても治して欲しいくらい大切な車ならそれなりにもっと大切に扱ってくださいよ! 降谷くんも同じです。いくら仕事だからって死ぬことを天秤にかけてまですることじゃないでしょう!」
「すまない」
「すまないって…私はいいかもしれないけど、降谷くん修理に今まで何千万かけてるの?」
お客さんの前で始まる説教に、すでにリムジンをガレージから庭へ移動し終えていた使用人もその主の勝典さんも釘づけだ。
しかもここまで言っているというのに目の前の降谷くんは反省の色が以前よりも伺えない。まるで聞き流しているような態度と、不自然に合わない目線にしびれを切らした私はジャケットの襟元を掴み控えめに引っ張るとそれに気づいた降谷くんとやっと目が合った。
「ちょっと、どこ見てんの? 今私が――」
「宮下さん」