【降谷零】SPARK × PUNK【名探偵コナン】
第4章 「元整備士」×「マスタングGT500」
グラリと、視界が歪み足元がもたつく。
…………全身に力が入らない。一度でも目を閉じたら持って行かれそうになる意識。
これ、あの時と同じ感覚。いつだ、一体いつやられたんだ。
数秒後、私はハッとしたように口元を手で覆った。
「ペットボトル………っ」
「ご名答。ちなみにあの時、私は飲んでなんかいないわよ。ただ口元に隠し入れていたカプセルを溶かしただけ。どうやらあなたからルルという架空の女は相当信頼されていたようね……ありがたいくらいに」
まるで煽るように、今この状況を楽しんでいるかのような表情で私を見下ろす。そんな間にもお互いを濡らしていた雨水が途切れる気配はない。
そう、私は水を飲ませるために、この人気の少ない廃倉庫へ行くために走らされていたのだ。
グラグラともたついていると持っていた拳銃に女の蹴りが入り拳銃は音を立てて自身から遠くへと転がっていく。
立つこともままならなくなり、抗うことの出来ぬままそのまま壁に手を付きながらズルズルその場へ崩れ落ちコンクリートに膝を着いた。
瞼を閉じたら終わりだ。もう一生ここへは戻って来れない。この女の元へ連れ去られて、ありとあらゆる情報を吐くまで生き地獄だ。
迫り来る睡魔と揺れる視界の気持ち悪さに耐えながら顔を顰めて俯き短く息を繰り返す。
「そして溶かしたのは、この前よりも即効性のある少し弱めの睡眠薬と……………自白剤」
それを聞いた途端、唯一の逃げ道を塞がれた気分だった。
ああ、まずい。
脳内が、身体中が危険信号をあげている。
「さあ、答えなさい。設計図と説明書の場所はどこ? あなたが持っているの? それともお家かしら? あの人が探しているの」
私の目の前でしゃがみこむと女は先程とは打って変わってまるで子供をあやす様に頭を撫でながら喋り出す。