【降谷零】SPARK × PUNK【名探偵コナン】
第4章 「元整備士」×「マスタングGT500」
「……一旦、ここで、休憩…しよう…」
「こ、ここまでくれば、今のところ大丈夫だよね」
「はぁ…………アリスチャン……お水ください…」
数分後、走った先で見かけた廃倉庫に私達は周りがいないことを確認して駆け込んだ。
息を切らすルルちゃん。
ルルちゃんはあくまで一般人、体力の差が違う。それにお互い仕事用の衣装であるピンヒールで駆けて来たんだ。さすがに体力もいつもより消耗するし、足も痛くなる。
私はカバンからペットボトルを取り出すとルルちゃんに差し出した。
「びちょびちょになっちゃったね」
「うん、もうぐっしょり…」
スカートの裾を絞り水分をコンクリートへと落とし濡れ切った髪に手櫛を通す。
「アリスチャンも飲んだ方がいいよ。私が口付けちゃったけど」
「そうだね、全然大丈夫。ありがとう。」
ルルちゃんが数口飲んで帰って来たペットボトルの蓋を開け、再び開けて3口ほど口に含む。
久しぶりに走ったせいか、水が喉を潤していく感覚で先ほどのどっと来た疲労がまるで解けていくように生き返る。
靴擦れで足元がヒリヒリと痛む。近くにあったドラム缶に手を付いてひとまず靴を脱ぎ捨てようと思い、その場に屈み込み靴のリボンとベルトを解く。
…………ガチャリッ
この国では、聞き捨てならない音と、感覚が後頭部に押し付けられた。
「そのまま、動かないで。…アリスチャン。………………いいえ、宮下修造の……………………娘さん?」
いつもの高らかな声とは裏腹にしっとりとした色のある声に変わる。
「…………破廉恥ですね。まさか胸に、そんな物騒なモノを隠し持っていたなんて」
「あら、あなたも柔らかくていい胸よ」
「それはどうも」
そう冷たく言い放って私は手を上げてゆっくりと立ち上がると解いたピンヒールをその場に乱暴に足で放り投げた。
振り返ると床に黒髪の長髪のカツラを放り投げる。ブロンドにエメラルドグリーンの瞳と真っ赤な口紅が映える女性。
犯罪者にしてはもったいない綺麗な顔をしていた。