【降谷零】SPARK × PUNK【名探偵コナン】
第4章 「元整備士」×「マスタングGT500」
「このひと、やばい」
分かってる。分かってる。でも、足りない。まだ。
「ルルちゃん、飲みすぎちゃったみたいで……席を外しても?」
「ああ、構わないよ」
私は秀也さんにそう伝えると同じくルルちゃんに耳打ちをする。
「大丈夫。私が何とかする」
私は黒服さんを呼び留めるとルルちゃんの背中を押して席から外させた。
「最近、物騒で結構精神的に問い詰められてる女の子多いんです」
「それは気の毒だな。確か、無差別に気絶させられたそうだな」
そしてわたしは、たまたま落ちて来た欠片を私は不意に拾い上げた。
―ーなぜ、彼は、気絶していたことを知っているの?
「……騒動に八合った人達全員には、その犯人を刺激しないように厳重に口止めをしています。お客のあなたがどうしてそれをしっているんですか? それも、まだ2回目のあなたが…」
でも、ボロを出したようには思えない。この店に盗聴器はない。私が全部調べたんだから間違いない。
男はまるで元々知っていましたと言い張っているようなそんな感じ。でも、これは事実だ。
「それとも、この店にいる誰か(仲間)から聞いたんですか…?」
踏み入った質問に秀也さんは少しだけ顎を突き出し目線を上げた。
この時、初めてちゃんと秀也さんと視線を交わした気がした。皮肉にも綺麗だと思ってしまったそのグリーンアイ。日本人…? ではなさそうだった。
一瞬視線を交わすとすぐに秀也さんはかぶっていたキャスケット帽のつばを目深に引いた。
それが、答えだと。
私は確信した。
「チェックおねがいします」
私は彼の断りもなく会計を呼ぶ。秀也さんは私を無言でただ見つめるだけで止めようとも文句を言おうともしなかった。そんなことよりも、秀也さんはまるでこの状態を楽しんでいるかのように口元に笑みを浮かべていた。
特に反抗するようなそぶりを見せることなく会計を済ませると、店長に「私が見送ります」と断りを入れて彼をエレベーターの出入り口へと二人で向かう。
その間も、男は何食わぬ顔で歩いていた。