【降谷零】SPARK × PUNK【名探偵コナン】
第4章 「元整備士」×「マスタングGT500」
ルルちゃんはあの時、微かではあるけど犯人の姿を見ている。そして秀也さんは初回フリーなしで私を指名し名していたのにも関わらず、ひそかにルルちゃんを目で追っていたこと。
…あのルルちゃんのピリピリとした態度。何か、ある。多分ルルちゃんの中で、何かの違和感にこの男が引っ掛かっているんだ。
私の太ももに手を置いていたルルちゃんの力が収まる気配がないのは、おそらくこれに違いない。私はその手の上に自身の手の平を重ねて握りしめた。
「確か、この前は結構すぐ帰りましたけど、何か用事でもあったんですか?」
「ああ…仕事でね」
「大変そう……何の仕事なんですか?」
雰囲気を崩さず、相手の情報を引き出していく。
確かに怪しい、でも怪しいだけで根拠を証拠もなにもない。何か決定的な手掛かりでもなきゃ、まだ犯人候補には上げられない。
「秀也さんは、なにか得意なこととかってあったりするんですか?」
男は顎に手を添えて「そうだな…」と呟くと口を開いた。
「……………ダーツ、とか」
その言葉を聞いた途端、密着していたルルちゃんの身体がビクッと小さく震えた。しかしすぐに横目で見ればルルちゃんはいつものにこやかな笑顔に戻りシャンパンを仰いでいる。まるで何かをかき消すかのように。
「へぇ~、ダーツですか。 …実は、私も得意ですよ。射的とか」
「そうなのか?」
「ええ、中の上くらいです」
「それはなかなかだな、今度是非手合わせしたいところだよ」
―ーダーツ。
もし本当にうまいのであれば、異国の遠距離仕様の注射針銃で仕留めれば一発でアウトだ。それに、もし腕のいい闇金の殺し屋でもしたら夜の街の店内に忍び込んで背後から何もなかったかのように気絶させるなんてさぞ簡単に違いない。
ここは信頼と平和で作り上げられた国、日本だ。銃規制のない海外とは違う。
何となく、何となく、分かる。この男、何か怪しい。でも、この人はお店の人ではなく客。それも最近の。
生憎まだ注射器の成分鑑定の結果は出ていない。それに落ちていたのは押し出し式の注射器。ダミーかダミーではないかも、それも鑑定結果が出ないと分からない。考えれば考えるほど矛盾は広がる一方で一つになる気配がない。
何か、何か私は見逃している。
もっと、一番重要なことを―ー。
すると耳元でルルちゃんが小さく耳打ちをする。