【降谷零】SPARK × PUNK【名探偵コナン】
第4章 「元整備士」×「マスタングGT500」
「アリスちゃん本命の子?」
「うん、前に来てくれたお客様。いつかペア指名するって言ってくれましたもんね。今日ちょうど二人ともペア指名しか取ってないんです。タイミングいいですね…!」
「それは良かった」
秀也さんの隣へと座り、初めましてのルルちゃんは名刺を差し出し終わると案の定私を挟んでルルちゃんもソファーへと腰を下ろした。
「二人とも随分仲がいいんだな」
「うん、当たり前だよ…! 私アリスちゃん大好きだし!」
そう発せられたルルちゃんの声色は明るいが、腕を絡めて私の太ももに置かれた手の平がかすかに力んだ気がした。
「何か飲まれますか?」
「そうだな、じゃあ…前と同じものを二人に」
「ルルもいいんですか‼ ありがとうございます~!」
ルルちゃんが黒服さんを呼べば、この前見た光景と同じ景色が広がりシャンパンの蓋を開ける音が店内に響いた。
私が一杯のシャンパンを飲み終わる間、ルルちゃんは躊躇なく何杯ものシャンパンを流し込み、気づけば一本空になっていた。
この前体調を崩したことをきっかけに、私があまりアルコールが好きではないと知ったルルちゃん。ペアともあってお客様に私があまり飲んでないとバレないよう、こっそりボトルを空にしていってくれている。
「君は無理して飲まなくていいぞ、そばにいてくれれば」
「はは…、すいません。でも飲めなくはないので」
シャンパングラスを唇に当てて傾けると同時にうなじにスッと指の腹が触れ感覚に一瞬ビクッと肩が上がる。素肌の肩に男の手が回ろうとした瞬間、パシンッ!っと、乾いた音が私の耳元で響いた。
「店内では女の子に触れることは禁止ですよ」
「なるほど、それはしらなかった」
「ご、ごめんなさい! ルルちゃん、わ、私のこと好きすぎて嫉妬深いんです! それに、前の騒動のトラウマでちょっと…、本当にすいません。本当はいい子なんです!」
「大丈夫だ、気にしないでくれ」
思いもよらない出来事に慌ててフォローを入れると特に気にすることもなく秀也さんは乾いた笑みを漏らした。
ルルちゃんの顔が今までに見たことないくらい険しい顔で秀也さんを睨んでいる。…いいや、もしかしたらもう彼女にとってこの人は、もうお客様ではないのかもしれない。
でもどうして? どうしてそこまで? ここで頭に過ったのは、あの時の警察沙汰になった騒動だった。