【降谷零】SPARK × PUNK【名探偵コナン】
第4章 「元整備士」×「マスタングGT500」
「送ろうか?」と聞かれ「ううん、大丈夫だよ。ありがとう」と返すが裏口まで送ってくれると言う。いつも通りルルちゃんが腕を絡ませ廊下を歩いているとスタッフルームのドアの前に差し掛かる。
今日は仕方ない。それにスタッフである可能性は昨日も言った通りかなり低い。今後は他を厳重にあたってみよう。
二人でカツカツとヒールの音を響かせながら廊下を歩く。
「そう言えば、最近歌舞伎町にいるらしいな」
「ああ、俺も聞きました! 風の噂では連続殺人犯って噂ですよ……」
「怖いっすね~、うちにも実はいたりして」
「そう言えばルカちゃん最近怪我で休んでるじゃないですか。あれ、やられたらしいですよ」
あの今休み続きのルカちゃんが?
スタッフルームから聞こえてきたそんな会話に私達は思わず立ち止まった。わかには信じがたいその話は同じくルルちゃんも『まさか』と言った顔で私の方を振り返った。
「アリスチャン、聞いた今の?」
「うん、私体調不良って聞いてたけど…ルルちゃんは?」
「私も同じだよ、アサミちゃんには直接聞いてないけど噂でね」
小声でそうごにょごにょと話していると次の瞬間、チクリと首元に痛みが走った。
数秒してカランカランッと乾いた音が廊下に響く。
音のする方へ目線を向ければ廊下の床に落ちたのは二本の注射器。それを視界に入れたと同時に隣で腕を組んでいたルルちゃんがドサリと倒れ込んだ。
思考が追いつかない。よりによってこんな時になんで二日酔いなんだ――。
遠退いていく意識の中後ろを振り返るがすでにそこに犯人はいなかった。じわじわと広がる温かな感覚に私は耐え切れずその場に倒れ込んだ。
そして目が覚めた時、最初に映ったのは眉を下げてべそをかいているルルちゃんだった。
「アリスチャ~ン!! うわぁぁあ‼」
泣きながら抱き着いてくるルルちゃん。場所はいつも接客をしているホールのソファー。いつの間にかここまで運ばれていいたらしい。そばには店長と黒服の二人がいた。