【降谷零】SPARK × PUNK【名探偵コナン】
第4章 「元整備士」×「マスタングGT500」
窓の外を見ながら憂鬱に浸っていると突然目の前が真っ暗になったと思えば、降谷くんが私の顔の上で手のひらを擦り付けるように目元から下へとまるで拭くように押し付けてくるので思わず「ぶわ…っ!?」と色気のない声がこぼれてしまう。
「変なこと考えるな」
変なことって、…失礼な。でも何も言えなかった。降谷くんの言っていることは間違っていなかったから。
私は降谷くんの手を取ると私に突然変なことをしてきたせいで手の平に付いてしまった自分の付けていた色付きリップを指でゴシゴシと拭うとフロントシートの上に押し付けた。
「それももうやめてね…………くせだったから」
泣きそうな顔をすると、いっつもお父さんがやる癖だった。
「それは悪かった」
気まずくはない。もう終わったこと。
そしてしばらく、静かな沈黙が続いた。
BGMのない車内はRX-7のエンジン音が響いている。少し生暖かな車内、小刻みに揺れるシート、ひとりではないという、降谷くんはいるという安心感からか、ゆっくりと無意識に瞼が閉じていく。
まずい、寝そう。
そう言えば今日、いつもよりちょっとお酒飲み過ぎてたから――そのせいかもしれない。
ふわふわと浮遊し出す意識の中私は降谷くんに問いかけた。
「ねていい?」
すると降谷くんはまた柔らかな声で「いいよ」と答えた。