【降谷零】SPARK × PUNK【名探偵コナン】
第4章 「元整備士」×「マスタングGT500」
「それに、相手はやっぱりお客さんっぽいかも。ここ一ヶ月スタッフルームを盗み聞きしてもボロがなかったし、営業許可証もあるし、……店長や黒服の人達ではないかもね」
「じゃあ客を重点的に見るか…」
「了解」
するとプライベート用のスマートフォンから数件の連絡が入る。送り主は言わずもがな、あのルルちゃんだ。
〝『アリスチャン! そういえば今日のアルマンドのレッド入れた黒い服の人、雰囲気超イケメンじゃなかった? あの金髪の!』〟
その連絡で私はあの時の物珍しいお客さんを思い出した。
「そういえば今日、初回でフリーなしで私を指名してきたお客さんがいました。普通は初回で女の子が交代で席に着くんです。それから好きな子を指名してっていう流れなんですけど、あの人……私を指名したあとすぐに高級シャンパンを入れたんです。タイプですか?って聞いたら『そんなところだな、』なんて言ってましたけど……」
「けど……?」
降谷くんがごもる私に聞き直す。
「あの人、チラチラルルちゃんをすごい見ていたんですよね。『もうひとり指しますか?』って聞いたら、いいや。また今度にするよって」
「容姿は?」
「長身で黒のスーツとキャスケット帽子、降谷くんより少し長めの金髪で、目元は髪で隠れて見えなかったですけど………ガタイはいい方でしたね。名前は…確か金子秀也という男性です」
「………まぁ、一応注意いておけ」
「はぁい」
目の前のボトルホルダーにあった未開封の水を指さして「飲んでいい?」と聞けば「いいよ」と柔らかな声で返ってくる。きっと生暖かな車内の暖房のせいなのかも。そう思いながら私はアルコール漬けになった舌に水を流し込んだ。
しばらく降谷くんと車内で仕事の話をした。
降谷くんは仕事で一週間迎えには来れないらしく、代わりに彼の右腕こと風見さんが指定の場所に迎えに来てくれると言っていた。
降谷くんも大変なんだなぁ。なんて思いながら高速道路から見える景色はこの前見た時よりも、昨日よりもすっかり真っ暗になっていた。明かりがついているのはどれも自宅と看板ばかりだ。