【降谷零】SPARK × PUNK【名探偵コナン】
第4章 「元整備士」×「マスタングGT500」
「今日も凄かったですね二人とも」
「でもアリスちゃん、本気出せばうちでナンバーワン取れるんだけどなぁ……」
「明日の予約こっちにまとめておいたので確認お願いします」
微かに聞こえるまばらな会話。ここに入ってからずっと帰り際聞いているが特にボロが出ていたことは無い。至って普通の業務的な会話。
やっぱりお客さんの中にいる可能性が高いかな…。
考え込みながらその場を去るとプライベート用のスマートフォンを取りだし降谷くんへ報告と得た情報を報告する。もちろん今日も成果はゼロ。いちいち同じ文を打つのも面倒になり、昨日送った文章をコピーペーストして送信した。
「さっむ…ッ!」
裏口のドアを開け店から出ると突然吹いてくる風にそうこぼすと歩きながら羽織っていたジャケットのボタンを留める。
晩夏の候はもうとっくに過ぎ、家の庭の葉もいつの間にか赤く染まっている。
もうすぐ季節が巡る頃、とにかくルルちゃんから逃げることと毎回この服を更衣室で着替えることのめんどくささでジャケットを羽織るだけの通勤スタイル。さすがにそこまで続くと暑さよりも寒さに弱い私からしたら耐えられる自信はない。
それまでに見つかるといいんだけどなぁ、と思いながらいつものように裏道へ周り、指定の道路脇へ寄ると向かい側から白のスポーツカーがやってくる。そう、あの降谷くんの愛車であるRX-7だ。
車内から開けられる助手席のドア、私はそれに流れるように乗り込むとRX-7と共に夜の街から姿を消した。
「今日は色々遅かったな」
「うん、今日集計日で止めてくれる人いなくてさ」
「見られてないだろうな?」
「大丈夫、撒いたし言い訳は通じてる。盗聴器も事前に確認した」
そう言いながらシートベルトを付け、ふぅ、と小さく息を吐きながらシートに背を預けた。
この潜入捜査が始まってから同じ時刻に定期的な連絡と同様に身元確認も踏まえて降谷くんは私に送迎をつけた。もし退勤後一時間以内に連絡が来なかったり指定の場合にいなかったりした時、その時は私の身に何かあったと判断すると解釈を作ったのだ。