【降谷零】SPARK × PUNK【名探偵コナン】
第4章 「元整備士」×「マスタングGT500」
「ア〜リ〜ス〜チャン!!」
閉店後の更衣室、突然背後から聞こえてくる高い声、それと同時にゾワリと背筋に虫唾が走った。
後ろから私の胸をガッシリと掴んで持ち上げる奇妙な行動を取るのはこの店でひとりかいない。この店、人気ナンバーワンのルルちゃんだ。
高身長でスタイルも良く、赤のミニドレスに長髪の黒髪をポニーテールにしたクールな容姿からは想像もつかない人懐っこさと感情豊かなギャップにお客さんは皆夢中になってしまうらしい。私の接客方法とは真逆、世間一般でいういわゆる構ってちゃんだ。
胸を掴まれたと同時に脊髄反射でいつものように抵抗し始めるがそれをルルちゃんは毎回簡単には逃してはくれない。毎回尻尾を振った犬のようにベタベタと付きまとう。
「もぉ〜! やーめーてー!」
抵抗した末、更衣室の床でもみくちゃになりながらそういうとやっとの思いで今日の修羅場から抜け出せた。酷い時は他の子達が引き剥がしに入ってくれるが、今日は週一回の集計の日、シャンパンが一番多く入ったルルちゃんと私が他の皆よりも退勤時間が遅くなっていたのだ。
手早くロッカーからジャケットと私物を入れたポーチを手に取ってハンドバックに詰め込んだ。
「私、待たせてるから早く行かないと」
「また~? 絶対彼氏じゃん!」
「もう……彼氏じゃなくて知人っていつも言ってるでしょ」
「私もアリスチャンと帰りたい〜!」
「ダメだって、家族に内緒でやってるからルルちゃん可愛いから一緒にいたらバレちゃう」
「じゃあ今度仕事終わりに一緒にご飯食べようよ! 同伴でいいところ教えてもらったんだ!」
「うん、約束するよ」
そう伝えるとルルちゃんが「やった〜!」と床でうねうねと浮かれている間に私は風のごとくダッシュで更衣室を出た。あと何回目これを私は繰り返したらいいのだろう。裏口へと向かいスタッフルーム付近の廊下に差し掛かったところで私は足を止めて音を殺すと耳を澄ませた。