【降谷零】SPARK × PUNK【名探偵コナン】
第4章 「元整備士」×「マスタングGT500」
「お酒強いんですね、私も今度飲んでみます。そしたらまたお話しましょう。お名前はなんて言うんですか?」
「金子秀也だ」
「秀也さんですね、覚えときます」
そして一旦会話が途切れた。
キャバクラにあってはならないことかもしれない。けどこれでいい。媚びないのが私の売りだから。相手の自慢話を引き出して、共感し褒め、気休めの休憩が口直し。キラキラとした店内とは裏腹に落ち着いた雰囲気の接客が以外にもお客さんの心を掴むらしい。
今や店では五番目と言った所だがあくまで本業ではないので順位は気にせずいつも通り振舞っている。
まだイガイガと口に残るアルコールを水で流すと、ふと秀也さんと目が合った。
「……酒は苦手か?」
「…………え?」
とんでもない洞察力の思わず私は目を見開いた。
うそ、顔に出てた? いや、顔に出てるわけないじゃん。だってここ一ヶ月そんなこと言われたこと一度もないし、お酒が苦手なことはこの店の店長と一部の同僚と黒服の人しか知らない。
「飲み終わった後、少しだけ息をするのがゆっくりに見えた。それに瞬きも多く感じた。気のせいかそれとも癖なのかと思ったが水を飲んだ時にはそうはなっていなかった。…違うか?」
この人、そんなに私のこと見てたっけ……?
戸惑いを隠せず分かりやすく目が泳ぐ。なんて返すのが正解なんだろう。ひとまず、「実は度数の高いものは少し…」と答えれば、「無理せず飲まなくてもいい」と、再び自分のグラスに注いでいたアルマンドを手に取ると男はそれを一口で飲み干した。
「ルルちゃんにリシャール入りました〜!」
「やった~! ありがとうございます〜!」
別席で聞こえる高らかな声が店内に響いた。私達も思わずそこへと視線を向けた。
「彼女は…?」
「ルルちゃんですか? ここで一番人気の子ですよ。こっちの席に呼びますか? ここは三人まで同時指名できますよ」
「いいや、また次の機会にとっておこう」
「じゃあまた次を期待してもいいんですね。嬉しいです。良かったら連絡先交換しませんか?」
そう言って横に置いておいたブランドモノのハンドバッグから取り出したのはプライベート用とは別の潜入捜査用のスマートフォン。ちなみにこれは降谷くんのおさがりでもあるので出費はゼロだ。