【降谷零】SPARK × PUNK【名探偵コナン】
第3章 「元整備士」×「スバル360」
コナンくんに「大丈夫お姉さん?」と顔を覗き込まれ心配されたので「だ、大丈夫だよ、ありがとう」と返す。子供に心配される成人済み警察官、哀れすぎる。
子供って本当に何考えてるかわからない。
「じゃあ、宮下さんはもし今の仕事以外になれるとしたら何がいいですか? 来世とか!」
今度は園子ちゃんがコナンくんに続きそう問いかけた。
もしも話とか来世とか、そんなこと考えたこともなかった。うーん、と頭を悩ませればふっ、と一つだけあること脳裏に過った。
「普通の、生活をしたいな」
「普通の生活?」
そう答えれば蘭ちゃんと園子ちゃんが首を傾げた。
「うん、私交通事故で18に両親亡くしちゃってね。普通の家庭でお父さんとお母さんがいて、恋人がいて、結婚して、子供がいて幸せな家庭ならそれでいいかなって……」
言い切ったあと、もう氷が溶けきってしまったアイスミルクティーを再び口にする時、ポカンと蘭ちゃんと園子ちゃんとコナンくん、そしてあの沖矢さんまでもがこちらを見つめて物珍しそうな顔でこちらを見ているのに気づいて慌てて持っていたグラスを置いた。
「ご、ごめんなさい! 別に今の職が嫌な訳じゃないくて、ありきたりなダラダラした生活をしたいなって意味で…!」
「全然変なことなんかじゃないです‼ わかります。恋人と一緒にごくありふれた日常を過ごしたいの、わかります」
慌てて弁解を入れあたふたとしていると、その蘭ちゃんの真っ直ぐな瞳と言葉、その裏に隠された重みに私はハッとなる。嗚呼、この子も、きっとそうなんだ。
こんな思い、共感して欲しくない。分かって欲しくもない。皆してこんな思いしてほしくない。誰にもさせたくない。
私一人が動いた所で、何になるのか。そんなことは分かってた。けど私はそれでも目指してきた。きっと世間からしたら何も変わるわけないけど、私が頑張るだけで人ひとり救えるなら、頑張ろうと思えた。
ずっとそう願って警察官を目指してきたんだ。
「じゃあ、蘭ちゃんにとって今が一番幸せだって思う日がくるといいね」
「宮下さんも、きっと来ますよ!」
蘭ちゃんにそう言えばそんな返答が返ってきて私は笑みを浮かべた。幸せになるべき人達が幸せになれないなんて間違っている。