【降谷零】SPARK × PUNK【名探偵コナン】
第3章 「元整備士」×「スバル360」
××××
前の車を追って約三十分が経った。追われてるとはつい知らずひき逃げ犯は車を走らせる。スピードがかなり出てるし、一歩間違えたら大惨事だ。
数分すると追跡中していたブルーのプリウスが左への車道へと移り始める。
「犯人米花ICで降りるよ」
すると先ほどよりも少し小さな音声で降谷くんの声が無線から流れる。
「もし住宅街へ入るなら意地でも止めろ」
「……条件はそれだけ?」
「ああ、周りをよく見て判断しろ」
「分かった、後はこっちで対応する。多分ガソリンがもう底を突く所だから米花町付近念の為警察官呼んでおいて」
「ああ、頼んだぞ」
そう言うと通信は勝手に切れた。広い十字路の交差点に差し掛かる手前、赤信号にも関わらず減速する気配のないひき逃げ犯の車に私は仕掛けた。
二発の銃声が交差点に響く。
打った先は犯人の車のタイヤ。あのタイヤ、見た感じ最近変えたっぽくて若干躊躇したものの最悪の想定を天秤にかければどうってことない。責任をもって私がは注してやる。
パンクした後方のタイヤのせいで車体は鋭い音と共に車は一回転する。職業病からか思わず「あぁ……」とフルフェイスのヘルメットの中で口ごもる。
動かなくなったブルーのプリウスから飛び出てきたのは犯人である短髪でサングラスの男、交差点の真ん中から歩道へと逃走し始める。
これじゃバイクで追えない。慌ててバイクから降りて犯人の後を追おうとすると途端犯人が振り返って声を荒げた。
「動くなァ…ッ!」
向けられたのは一丁の拳銃。これはもう言い逃れできない。この国での一般人の拳銃所持は犯罪に値する。
それに拳銃を持ってるなんて聞いてない。持ってたらもっと別の方法を考えたって言うのに。
犯人が拳銃を構えたと同時に私も腰ベルトから拳銃を引き抜き銃口を向けた。幸いフルフェイスのヘルメットは脱いでいない。胴体と首だけ避ければ致命傷は避けられるはず。
私はフルフェイスのシールドを素早く上げ、銃を構えていたもう片方の親指でセーフティーを外した。
「動くなよッ!! 動いたらぶっ殺す…ッ!」
「お姉さん離れて!」
近くにいた茶髪の女性にそうそう叫ぶと犯人は身を強張らせながら数歩後ろへと下がる。