【降谷零】SPARK × PUNK【名探偵コナン】
第3章 「元整備士」×「スバル360」
この年になってすでに世間一般的に流通しているスマートフォンのアプリの扱いすら知らないなんて笑えて来る。あの時降谷くんが登録するところを見とくんだったと私は今後悔したので横で沖矢さんの操作を見ようと自身のスマホを渡すついでに沖矢さんの隣へとススッと移動する。
私のひらに収まるサイズのスマートフォンが沖矢さんの手に渡るとやっぱり男と女だと手の大きさも違うんだなぁと感じながら彼の操作する手を見つめていると一瞬、彼の手が止まった。
画面は連絡先一覧。そこには〝友だち2人〟と書かれた中に降谷くんと新しく沖矢さんの連絡先が追加されている。
「うわ、早い! もう出来たんですか! ありがとうございます! 」
渡されるかと思い手を伸ばす。しかし一向に渡されないスマホに私は「ん?」と違和感を覚えた。
「沖矢さん? ………す、昴さん?」
名前を呼びながら顔を覗き込むと沖矢さんはその細目を私に向けた。
気のせいか、微かに緑色の瞳が一瞬、ほんの一瞬見えた気がした。でも日本語もペラペラだし、背も高いからもしかしたらハーフなのかもしれない。それに気のせいだってこともある。
「ああ、すいません。考え事で…」
わざわざ画面を拭いて私に渡して来る沖矢さんにやっぱりいい人だなと感心しながらスマホを受け取った。
「でしたら帰ったらゆっくり寝てくださいね。沖矢さんまだこの先へ行くんですよね? 気をつけてくださいね。睡眠は大事ですから」
「ええ、そうですね。そうします」
その時、不意に未だ何となくもやもやと残る違和感の原因に気が付いた。
そうだ、普通は兄弟や家族が入ってるはずなのに、友だちが二人だけなんておかしい。もしかして気を使わせてしまったかもしれない。弁解した方がいいだろうか。
そう思っていった次の瞬間、遠くからブォンッとエンジン音が響く。咄嗟に横目で視線を移すとものすごい風圧と共車が真横を通り過ぎた。完全に速度違反の車、それに――ブルーのプリウスだ。
「すみません! 私行きますね!」
咄嗟に愛車へと駆け、ハンドル近くのスマホホルダーに素早くスマホを挟むと脇に挟んでいたヘルメットを被り顎下にあるボタンを長押しして無線を繋ぎもう一度ボタンを押せば無線がつながった。