【降谷零】SPARK × PUNK【名探偵コナン】
第3章 「元整備士」×「スバル360」
プルルルル、プルルルッ――
「はい、宮下です」
「宮下、今どこにいる」
「今? 今家下った所で丁度散歩してました」
二日後の夕暮れ時、オレンジ色の空を見上げながら降谷くんの電話に出る。内容は前に言っていた警視庁へ警察手帳や拳銃を取りに向かうと言う連絡だった。
「現在地を送れ、そこまで行くから」
「え、現在地って送れるんですか?」
間抜けな声で言うと、僅かに嫌な沈黙が流れた。まるで何かまずいことを言ったような、そんな感じの。
「スマホを持っているだろう」
「いや、ガラケーですけど」
「仕事用だろう」
「プライベート兼仕事用です。それにプライベートで連絡する人なんて今みたく降谷くんしかいません」
「……わかった。まず家に戻れ、それか向かう先の道にいたら拾っていくから。それと、スマートフォンも買いに行く。お前のそのガラケーは解約だ」
「降谷くんが買ってくれるんですか?」
「馬鹿か、二百七十万から引いてやる」
「そこは譲らないんですね」
相変わらず降谷くんのお金の使い方の基準はよくわからない。思わずハッっと短く笑った。
そして家に着けば既に降谷くんの愛車であるRX-7は止まっていた。ひとまず警視庁へ行くにふさわしいジャケットを羽織り内側からドアを開けてくれた降谷くんにありがとうと言いながら助手席へと乗り込み警視庁へと向かった。
終わり際に急遽データ登録用の写真撮影をしたせいで時間が長引き、結果閉店間際の電化製品店で運良く在庫のある最新機種のスマートフォンを勝手に降谷くんに即決された。一応私のお金なんですが。
こうして超特急で進む手続きのおかげで実感のないまま非日常的な生活が始まり、私は公安の彼の駒になった。
駒とは言っても、いたってやることは単純明快だ。
通勤はなし、代わりに彼の電話一本で現場の応援や調査、協力駆けつけること。命令は必ず聞くこと。目立った行動はしないこと。勝手な行動はしないこと。予期せぬことがあれば必ず連絡をすること。
契約内容と降谷くんの言ってることが入り混じって入るが、報告、連絡、相談。ある程度需要性のあるところはばっちり覚えてあるから問題はない。裏を返せば降谷くんからの連絡がなければ常に非番という訳で、もっともっと端的に簡単にまとめるならば、彼の協力者のような存在だ。