【降谷零】SPARK × PUNK【名探偵コナン】
第3章 「元整備士」×「スバル360」
「それと、今日の午後と明日は日付をまたいで仕事だから。もう行かないと」
「降谷くんも、ずいぶんとハードスケジュールで……ちゃんと寝てます?」
そう言いながら私はソファーから立ち上がる。
契約書の書類を持ってそそくさと家を出ようとする降谷くんに問いかけると彼は一瞬歩みを止めた。
「僕は、この国を守る為だったらなんだってするさ」
「………死んだら終わり。じゃなかったの?」
「死ぬ気でやってるだけで、本当に死のうとなんてしてないさ」
「死にますよ。犠牲のない平和なんて存在しないんだから」
言った後になって、私は少し目を細めた。
ちょっと、言葉が鋭すぎたかもしれない。最前線でこの国を守っている降谷くんに言うことではないかもしれない。最前線にいるなら尚更、いつ死ぬかも分からない。どこかで彼に恨みを持っている人間だっているかもしれない。
この世界にいる皆、死なない可能性なんてない。
でもそんなの、彼が一番わかってるはずなのに。
また冷たく言い返されるか、なんて返されるかな。そんな私の予想とは裏腹に、降谷くんは私に微笑み返すと家を出て行ってしまった。
それはまるで〝『大丈夫』〟と、私にそう言わんばかりの強く芯のある笑みだった。