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【降谷零】SPARK × PUNK【名探偵コナン】

第1章 「整備士」×「RX-7」



身内が亡くなって休暇を取ていたと私の噂を聞きつけた同期や教官達もわざわざ私の所まで出向いて励ましてくれた。皆自分なりに私を励まそうとお菓子をくれたり自分の黒歴史を暴露してくれたりして私を笑かした。特に後ろの席だった同期の松田くんは『早まって宮下も死ぬんじゃねェぞ』とか『気分悪くなったらすぐ言えよ』とか、休憩時間に席を外す時も『ひとりで出歩いて大丈夫かよ』とか人一倍心配されて最初はありがたく思ったけど五ヶ月くらい経ってもこんな調子だからちょっとさすがにうざくなったのを覚えている。

そして私は宣言通り成績はオールA、教官からの評判も良く成績二位だった同じ同期の伊達くんを抜いた。
それなのに、私は一度も首席になることはなかった。玄関前に張り出された成績表は常に上から二番目。首席は常に同期だった当時私より四つ上の〝降谷零〟と言う男が陣取っていた。降谷くんがいなかったら、私は確実に主席を取れたはず。悔しいが彼の実力はその通りだった。
見かけ上の順位であって、実質私は降谷くんと肩を並べることすら出来なかった。原因は、私の実力不足でもなんでもない。彼は歴代の生徒達の中でもずば抜けた異才だと教官達が話していた。そんなの、私に越えれるはずがない。この時期に入学した私の運が悪すぎた。
あの時は『あいつさえいなければ』と、随分腹が立ったけど今はもういい大人、そんな子供じみた感情はとっくにない。ああ、そんな時期もあったな~という今やいい思い出。

十九歳、私は十ヶ月間の警察学校での寮生活を終え卒業したものの警察官にはならず、実家へ帰り継ぐ予定ではなかった父の後を継いでから約五年の月日が流れた。まだ五年、もう五年。早いようで短い。

引継ぎ引き継がれ、そして時を得て現代の二十一世紀になった今、仕事のほとんどは自転車やバイクに自動車、海外部品や製品の輸入に修理、廃盤部品の相談、もっと言えばセキュリティシステムや設備管理その他諸々、時には遊園地や航空会社に鉄道会社までもがわざわざ父の整備施設が再開したと風の噂を聞きつけて電話を寄こす。
親と時代の変化はこの世で一番恐ろしいとつくづく実感する。
今はほとんど新規で訪れる人達は少なく、企業や個人のリピーターの方からの紹介された方が多い。おかげでありがたいことに生計は成り立っているし生活は苦しくない。むしろ余裕があるくらいだ。
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